たぶん週1エッセイ◆
映画「半分の月がのぼる空」

 心臓病を抱えた少女と肝炎の少年のラブストーリー「半分の月がのぼる空」を見てきました。
 封切り3週目土曜日、土曜日夕方、東京では3館だけの上映という条件で、5〜6割の入り。

 肝炎で入院中の高校生裕一(池松壮亮)は、担当の看護師の命令で、最近転院してきた心臓病の少女里香(忽那汐里)に声をかけ、高飛車な里香の態度に反発しながらも、次第に惹かれてゆく。病院の近くの砲台山に登りたいという里香と2人で病院を抜け出しバイクで砲台山に登ったとき、里香は自分と同じ病気だった父親に背負われてこの山に登った想い出と父がその後すぐ手術中に命を落としたことを語る。里香を連れて行った文化祭で想い出を作りながら発作で倒れた里香を見て、裕一は里香の母に生きるために手術をさせて欲しい、大学病院への転院で自分と会えなくなってもかまわないから里香に生きていて欲しいと懇願する。その後あえて里香から逃げ続ける裕一に、里香は夜裕一の部屋を訪れて転院を決めたことを告げるが・・・というお話。

 口べたな裕一と勝ち気で口達者な里香の恋の行方が初々しく微笑ましい。舞台となる病院の屋上、風になびく洗濯物が、意外に効果的です。
 難病ラブストーリーものですから、当然とも言えますが、泣かせるシーン満載で、注文通り泣かされました。
 ストーリーが進行するにつれて、かつて心臓外科医だったが妻を助けられなくて内科医に転向した医師夏目(大泉洋)の回想で混乱させられ、最後に、「はめられた」と思います。敢えてトリッキーにする必要があったかなとは思いますが、それはそれとしてジンときます。
 単純に難病ラブストーリーとしても、里香の様々な顔で感じ入らせて、いい映画だったなという感じはします。

 「銀河鉄道の夜」の「『おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。』『ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸いになるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸いなんだろう。』『きみのおっかさんは、なんにもひどいことないじゃないの。』『ぼくわからない。けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸いなんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思う。』カムパネルラは、なにかほんとうに決心しているように見えました。」というやりとりが、何度か登場します。「銀河鉄道の夜」としても、どうしてここなんだろうと、最初は腑に落ちませんでしたが、後から効いてきて、あぁやはりここなんだなと思います。ここも、なかなか効果的でした。

 でも、これも難病ものの映画でありがちですけど、心臓に穴の開いている少女が、あんな全力疾走で病院を走り回れるんでしょうか。
 それに、里香の母は今どうしてるんだろう。

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