庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「HAPPYEND」
ここがポイント
 現在の日本が既にそうなりつつある強権的な監視社会で自分がどう闘えるかを意識し考えさせられる
 予告編等からは安倍政権批判映画とは予想できず、見て驚く観客が多いようだ
    
 管理社会に鬱屈する高校生たちの反発を描いた青春映画「HAPPYEND」を見てきました。
 公開3日目日曜日、新宿ピカデリーシアター7(127席)午後1時30分の上映は9割くらいの入り。

 アベ政治的な政権が続き、ついに大地震等の非常事態に首相に全権を集中する緊急事態法が成立し、警察は顔認証で国民1人1人を特定でき政権反対デモを攻撃して参加者を逮捕している近未来の日本で、夜間自らが通う学校の部室に忍び込んだユウタ(栗原颯人)が幼なじみのコウ(日由起刀)を唆して校長の車にいたずらを仕掛け、翌朝それを発見した校長(佐野史郎)はこれはテロだと激高した。問い詰められてもしらを切るユウタらに業を煮やした校長は校内に監視カメラに写った生徒を顔認証で特定しその行動に減点をつけるAIシステムを導入して生徒らへの圧力を強め…というお話。

 現在の日本が既にそうなりつつある強権的な監視社会で、自分がどのように闘えるのか、どのように日和り諦めそうかを考えさせられます。
 まっすぐに闘い校長を追い込むが仲間であるはずの同級生から離反されて悄然とするフミ(祷キララ)、フミとコウを見どころがあると見て反政権デモに誘いその責めを負う岡田先生(中島歩)、現状を肯定できずに反発するが奨学金の申請許可取消で校長に脅され葛藤するコウ、音楽のことしか考えていない、子どもの頃からまったく変わらない(進歩がない)と批判されて傷つくユウタら、それぞれの闘いと挫折、回帰がテーマであり見どころだと思います。

 他方で、権力者側を小さく描いているのは、現実の権力者もそんなものということか、巨悪から目をそらすことにならないか、校長が意外に話し合いに応じるのは一定の勝利感を出したいからか、見かけが柔軟でも油断するなというメッセージなのか、今ひとつよくわかりませんでした。
 大地震(緊急事態!)の誤報アラートのシーンや、クラスの半数くらいが外国籍の教室(自衛隊員が募集の話をする授業で対象外の者は退室しろと言って教師が外国人の番号を読み上げるシーンがありました)で愛国心を言う場面は、単純にパロディというか皮肉なのでしょうけれど。

 首相の名前こそ別の名前(「しとう」か「きとう」かよく聞き取れませんでした)にしていましたが、実質は安倍政権を描き批判していることが明白です。
 予告編や公式サイトの記載からはそれは読み取れず、映画が始まって初めてそれがわかり、意外でした。エンドロール(ロールアップしませんでしたけど)が始まるや出て行く観客が多かったのは、安倍政権批判の映画とは知らずに観に来た安倍ちゃんファンが少なくないためでしょうか。
(2024.10.6記)

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