◆たぶん週1エッセイ◆
映画「ヘルプ 心がつなぐストーリー」
アメリカ南部の上流階級の女たちと虐げられた黒人メイドという関係に、異端の人材を絡ませ、どこかわいわいやりながらの市民運動的な感じの展開
自分が動き始めることで何かが変わる、前に進む部分も、反撃が来て後退することもあるけれども、動き続けることで前に進める、そういう思いを持てる
1960年代アメリカ南部の黒人メイドの状況を描いた映画「ヘルプ 心がつなぐストーリー」を見てきました。
封切り2週目日曜日、ヒューマントラストシネマ渋谷シアター2(183席)午前10時30分の上映は4〜5割の入り。観客層は中高年が多数派。
1960年代のミシシッピ州ジャクソン。大学を出て地元に戻ってきた作家志望のスキーター(エマ・ストーン)は、自分を育ててくれた黒人メイドコンスタンティン(シシリー・タイソン)がいつのまにか解雇されていたことや、友人の婦人会長ヒリー(ブライス・ダラス・ハワード)が白人家庭は病気の危険から身を守るために黒人メイド専用トイレを作るべきだという法案を主張し、トイレを使ったとしてメイドのミニー(オクタヴィア・スペンサー)を解雇したのを理不尽に思い、メイドの実情を告発する本を書こうと思い立って、友人のエリザベスのメイドエイビリーン(ヴィオラ・デイヴィス)に取材を申し込む。最初は、職を失う危険を考えて躊躇していたエイビリーンも、次第に口を開き、友人のメイドが逮捕されたことを期に、仲間に呼びかけるようになる。ついに本が出版され・・・というお話。
キング牧師らの公民権運動に揺れるミシシッピ州を背景に、「隔離すれども平等」という人種隔離政策(アパルトヘイト)の法案を次々提案するヒリー、エリザベスに代表される産むだけで育てない子どもに対する愛情の薄い母親といったアメリカ南部の上流階級の女たちと、虐げられた黒人メイドという関係に、都会の大学を出たジャーナリスト志向もあるスキーター、上流階級の夫人たちに嫌われ孤立してメイドにもこだわりなく接するシーリア、黒人メイドへの嫌悪をあらわにする娘への反発を強めるウォルターズ(シシー・スペイセク)といった異端の人材を絡ませることで、奥行きと幅を持たせながら、どこかわいわいやりながらの市民運動的な感じの展開をしていきます。
そして、運動を進めるスキーターを確信を持った運動家ではなく、作家でもジャーナリストでもというどこか軽めの志で、南部上流階級の頭の硬いイケメン男にも惹かれたりする、ミーハーなおねえちゃんに描いているところが、私にも何かできるかもって思えていい。
対照的に芯の強いエイビリーンとミニーのどっしり構えた強さ、ウォルターズの磊落さが、スキーターやシーリアの浮つきを抑えて、全体を締めています。
しかし、黒人に嫌悪感を持ち、病気がうつるなんていってトイレも使わせない人が、どうしてその黒人メイドに食事を作ってもらったり、子どもの世話をさせたりできるんでしょう。まぁ、その象徴として「ミニーのチョコパイ」事件があり、子どもが生みの母よりもメイドを本当の母として慕ったりするわけですし、そういう子どもたちが大きくなるうちに(映画では大人になったら母親と同じになるっていわれてはいますが)だんだんと黒人メイドへの嫌悪感がなくなっていくのだと思います。もっともそのレベルでは、アンクルトムズケビンで終わるのでしょうけど。
黒人メイド問題を超えても、自分が動き始めることで何かが変わる、前に進む部分も、反撃が来て後退することもあるけれども、動き続けることで前に進める、そういう感じを持って映画館を出れる映画です。
(2012.4.9記)
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