◆たぶん週1エッセイ◆
長野県立美術館 東山魁夷館
970点余も所蔵してるのに、一度に見せるのは60点弱、それもほとんどがスケッチって…
見てよかったと思える作品もありましたが…
久しぶりに書面の締め切りを抱えていない週末だったので、善光寺界隈を冷やかして、その横の長野県立美術館に行ってきました。併設されている東山魁夷館が、ずっと気になっていたので。
東山魁夷については、常時、「コレクション展」として、所蔵作品の一部を入れ替えて少しずつ展示しています。2022年1月22日は、令和3年度コレクション展X期なんだそうですが、展示は、57点で、ほとんど知らない作品ばかりでした。
しかし、展示されているうち「本制作」は4点だけで、あとはスケッチ・習作の類いばかり。展示室も実質2室(最後に東山魁夷の経歴とかを紹介している部屋が1室ありましたが、そちらには作品展示なし)です。
配布しているパンフレットでは、1997年の第2期寄贈で「東山魁夷館は総数970余点を収蔵する」と書かれています。長野県立美術館の収蔵品データベースで東山魁夷作品を検索すると235件。それ以外はデータベース化もしていないということではありますし、データベース化したものもすべて画像なしなので、よくわからないのですが、作品名で見ても著名作品がけっこうあります。リトグラフが多いから著名作品でも所蔵してて不思議はないということですね。
所蔵作品970点余というのですし、代表作的なものもわりと所蔵しているのですから、もう少し展示して欲しいと思います。運営する側から見れば、一気に展示すると飽きられてしまい継続的に客が来ないと思うのかも知れません。しかし、地元民が年間パスポートでも持ってリピーター化するというのならともかく、せっかく見に来たのに知らない作品ばかり、それも完成品や大作なら新たな発見があってうれしいかもしれませんけど、小さなスケッチ・習作ばかり見せられたら、次に来る意欲をなくすと思うのですが。
今回の展示では、パリの公園の風景を描いたとされる「静唱」と絶筆となった「夕星」が、見てよかったかなと思いました。どちらも「東山ブルー」で、木々が描かれているという意味では定番と言ってよいものなのでしょう。東山魁夷の作品って木(木々)が描かれている作品は安心してみていられるというか、さすがだなぁと思います。他のものを描くとどうも違和感を持つことが少なからずあって、その辺、アンリ・ルソーと似てるかも(絵のタッチは大きく違うんですが)なんて思っているんですが。
他方で、私は、東山魁夷が使う「赤」ってわりと好きなんです。「秋翳」(長野県立美術館も所蔵してますね)が典型ですが、今回の展示で四季をあしらった中で紅葉を描いている「悠紀地方屏風絵試作 春夏図・秋冬図」、東山魁夷には珍しい掛け軸絵「深秋」の赤が印象的で、これもみっけもんだったかもと思いました。前者はふつうに東山魁夷らしい紅葉絵、後者は東山魁夷らしからぬぼかし絵で、木々をぼかしてこの色合いというのがちょっとビックリしました。
4点は見てよかったと思えるならそれでよしとすべきかも知れませんが、東山魁夷いっぱいあったら2時間かかるな、閉館までに見切れるかなとか思いながら入ったのに、他の常設展(これも展示が少ない!)も合わせても45分くらいで見終わってしまいました。970点余も所蔵してるんなら、そんなに出し惜しみせずに、もっと見せてくれればいいのにという思いを捨てられませんでした。
(2022.1.22記、23更新)
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