◆たぶん週1エッセイ◆
映画「クリスマスのその夜に」
7組のカップルのクリスマスを描いた群像劇映画「クリスマスのその夜に」を見てきました。
封切り3週目日曜日、全国7館、東京では唯一の上映館ヒューマントラストシネマ有楽町シアター2(62席)の午前11時20分の上映はほぼ満席でした。
医師のクヌート(ワリチョフ・ソーハイム)は、往診で忙しく、教会のミサに行くという妻とはクリスマス・イヴもすれ違い。そのクヌートを呼び出したのは故郷に帰ることができないセルビア人とアルバニア人のカップル。ふだんは人のいない教会に潜んでいたがクリスマス・イヴは教会にいることもできずに廃小屋に隠れていたところ産気づき破水してしまった。クヌートは産湯も用意できず水は雪を溶かして得るしかないという男にため息をつきつつ、赤ん坊をとりあげる。離婚した妻トネ(クリスティーネ・ルイ・シュレッテバッケン)に新たな恋人ができて閉め出されたパウル(トロン・ファウサ・アウルヴォーグ)は、子どもたちにクリスマスプレゼントを渡したい一心でサンタに変装して妻の家を訪れる。不倫の関係を続けているカリン(ニーナ・アンドレセン=ボールド)は、クリスマスが過ぎたら妻とは別れるというクリステン(トマス・ノールストロム)の約束を信じていたが、クリスマスの日、クリステンは子どもがいる間は妻と別れられないと言い出す。少年トマス(モッテン・イルセン・リースネス)はクリスマスを祝う家族の元に帰らず、クリスマスを祝わないイスラム教徒の上級生の少女ビントゥ(サラ・ビントゥ・サコール)の家で二人して屋上で星を見続ける。かつては故郷の英雄だったサッカー選手のヨルダン(ライダル・ソーレンセン)は大事な一戦でペナルティキックを外して以来酒浸りになり今では乞食をしていて故郷に帰る電車賃もなかったが、さまよい歩くうちに偶然かつての恋人だったヨハンヌ(イングン・ベアテ・オイエン)の住むトレーラーにたどり着く。ある家では年老いた男が手をふるわせながらアイロンをかけ、病床の年老いた妻と過ごすクリスマスの準備をしている・・・というお話。
登場する人々のエピソードが少しずつ絡んでいく展開ではありますが、全部が絡むわけではなく、4つのグループになって行くにとどまります。その意味では中途半端感があります。
大きくは希望というかハートウォーミングな方向を示す2グループと、悲哀とわびしさに満ちた2グループという感じで、全体が暖かな幸せな感じで終われるということでもありません。そのあたりはむしろ現実的といえるでしょうけど。
登場人物が多い上に全体が絡まるわけでもないので感想も断片的ですが、医者というのはやっぱり大変な仕事だなぁとやはり実感してしまいます。元妻にサンタのマスク越しに新しい恋人と思い込まれたまま迫られるパウルの切なさは何かちょっと沁みる。でも新しい恋人、結局死んじゃったんでしょうか。ちょっと気がかりでした。トマスとビントゥの少し切ないやりとりがほほえましい。キリスト教徒白人とイスラム教徒アラブ人のかわいいカップル、セルビア人とアルバニア人のカップルをあえて登場させたあたりにはちょっと政治的な(といっても平和的なヒューマニズム方向の)メッセージが込められているのでしょう。エピソードの中で一番感じが悪い、不倫二股男のクリステンの不誠実さ。もっとも、妻と愛人におそろいのマフラーをプレゼントするのは、不誠実というよりも手抜き・無神経というべきなんでしょうね。見終わってカミさんが、あの無神経ぶりはあり得ない、あなたはマメだからそういうことはないよねって。あの・・・前半分はいいんですが、後ろ半分はそういう問題じゃないように思うんですが。
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