◆たぶん週1エッセイ◆
映画「ホームレス中学生」
ある日突然強制執行で家を追い出され、父親から「解散」宣言を受けて最初は自分だけ、後に兄弟だけで生活することになった中学生の生き様を描いた青春映画「ホームレス中学生」を見てきました。
最初の土日は9万人動員で興行成績3位だそうですが、封切り2週目土曜日映画の日でも朝一番は2〜3割の入り。まぁ空いてる方がいいと思って朝に行ってはいるんですが。
主人公田村裕(小池徹平)は、家を追い出されて兄弟には友だちの家に世話になってると嘘をついて公園に寝泊まりし、公園でガールフレンドに見つかっても本当のことが言えずに誤解されて破局に至りと、本当のことを言わないために苦しい生活を送ることになります。このあたり、兄弟や友だちには本当のことを言えばいいのにと思いますが、見栄なんでしょうね。
公園で過ごす期間は短いのですが、ここが見せ場になっています。雨をシャワーに使い、草やダンボールまで食べるという状況ですから、かなりどろどろに汚れてるはずですが、シャツは白いし髪もサラサラした感じ。友だちに見つかって家に連れて行かれて友だちの母(田中裕子)から風呂に入るよう言われて久しぶりの風呂に入る幸せ感を示すシーンでも、体を流すお湯は茶色いんですが、その前の体は全然汚れてないし、石けんの泡も真っ白だし。そういうとこ、もうちょっと力入れて欲しいなぁ。
友だちの親に聞かれて事情を話し、友だちの家に居候し、後には民生委員の手配で生活保護を受けて家を借り兄弟3人で暮らすようになり、学校にも戻れ、めでたしめでたしとなるかと思うと、もう一悶着あって、この後裕がまた学校に行かなくなり家出するエピソードが入ります。しかし、この動機が、民生委員の西村さん(いしだあゆみ)が死んだのを見て初めて、幼いときに死んだ母親ともう本当に会えないとわかり人生がどうでもよくなったというのは、どうにも収まりが悪い。後半のエピソードを端折っているので、西村さんとの関係も家を世話してくれたときだけだし、小学校に入る前後くらいの時期に目の前で死んだ母親が本当に死んだんじゃない、いつか会えると中学3年生までそう思ってたと言われても・・・。
裕の行動がどうも納得できない分、姉幸子(池脇千鶴)の強さ、図太さ、包容力が光ります。文句を言いながらも、まっすぐにけなげに我慢強く生活する態度に打たれます。少ないご飯で満腹感を得るために10倍噛めと兄(西野亮廣)に言われると10分間噛み続け新たな境地を見出すとか、裕がよそ見してマンホールに落ちて壊れて時速10kmしか出なくなったバイクにも文句も言わずに乗り続けるとか。
裕の子どものころの回想で、幼いころに死んだ母京子(古手川祐子)とのエピソードが度々登場し、ほとんどの場面で優しい母がほほえんでいます。実はこの映画、古手川祐子ファンのために作られているのではないかと思ってしまうほど、甘く美しい笑顔映像の繰り返しです。中高年層の客はむしろそちらに満足感があったりして。
田中裕子の「当たり前田のクラッカー」も中高年ファン向けでしょうし。
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