◆たぶん週1エッセイ◆
映画「インクレディブル・ハルク」
アクション映画としての見どころは、序盤の米軍との追いかけっこまで
ハルクに変身した後は前半はキング・コング、後半の対決はサンダ対ガイラ+スパイダーマンのイメージ
米軍の秘密兵器開発の過程で大量のγ線を浴び、心拍数が200以上になると怪力の超人ハルクに変身する体となった研究者ブルース・バナーが、米軍の捕獲計画から逃げ、元の体に戻ろうとするがうまくいかず大暴れする怪物ものアクション映画「インクレディブル・ハルク」を見てきました。
平日夜・雷雨の後という悪条件とはいえ、封切り5日目でガラガラなのはちょっとビックリしました。
序盤、ブルース・バナー(エドワード・ノートン)の潜伏するブラジルの貧民街、積み木細工のような建物がぎっしり連なり、香港の裏街よりごちゃごちゃして迫力があります。ここでの米軍との追いかけっこがなかなかにスリリングです。
でも、現実的なサスペンスないしアクションとしての映像はここまで。ブルースがハルクに変身してしまうと、やはり怪物ものになってしまいます。前半のハルク対米軍の対決はキング・コングのイメージ。後半、米軍特殊部隊のエミル・ブロンスキー(ティム・ロス)がパワーを求めてハルクと同じように変身できる体となった後の対決はサンダ対ガイラ(ゾンビ風の2人の怪獣の対決)+スパイダーマン(血で体質が変化+ビルを駆け上り跳ぶ)のイメージ。
公式サイトには「今度のハルクのテーマは『愛』」なんて謳われていますが、嘘だろうって思います。確かにハルクは何度か身を挺してベティ・ロス(リヴ・タイラー)を守りますが、全体がドンパチの繰り返しで印象はどう見ても怪獣映画です。
愛といって目を引くシーンとしては、サミュエル・スターンズ教授(ティム・ブレイク・ネルソン)の研究室で元の体に戻るために電気ショックで変身させられ暴れもがくハルクにベティが上乗りになって抱きつき「私の目を見て」と叫んで落ちつかせるシーンくらい。
むしろ、愛といえば、ハルクが米軍の攻撃からベティを守って抱きかかえて連れ去った後、ベティの父でもある米軍のロス将軍(ウィリアム・ハート)に対し、「あいつはベティを守った」と述べ、「私も娘の命を守ろうとした」というロス将軍に、「私は仕事柄誰が嘘をついているかはわかる、あなたは嘘をついている、どこに行ったにしろベティは彼を守る」と啖呵を切ったベティの恋人の精神科医がとてもけなげ。
逃亡中のブルースはいったいどうやって稼いでいるのだろうか(メキシコでは乞食をしていたようだが新しい服を着てアメリカに現れたのは・・・ベティの母の形見のネックレスを買い戻せたのは・・・)とか、サミュエル・スターンズ教授はいつの間にどうやってハルクの血液をあんなに培養できたのだろうとか、ヘリコプターが墜落して他の米軍兵士は死んだ様子なのにロス将軍とベティの2人は怪我1つせずに出てこれたのはどうしてだろうとか、いろいろ気になる点が残ります。
ラストシーンは、この映画自体の終わり方としては今ひとつよくわからない、なにか続編へのほのめかしのような会話で終わっています。こういうの興ざめしてしまいます。
(2008.8.5記)
**_****_**