◆たぶん週1エッセイ◆
映画「百円の恋」
使用前・使用後のような安藤サクラの変貌が見どころ
格差社会の負け組の不器用さ、病んだコンビニ労働者の描き方に庶民目線を感じる
不器用な引きこもり女性の自立転身を描いた映画「百円の恋」を見てきました。
封切り4週目日曜日、全国12館東京2館の上映館の1つテアトル新宿(218席)午前10時55分の上映は4割くらいの入り。
弁当屋を営む両親の元で働かずにだらだらと過ごす32才の一子(安藤サクラ)は、離婚して子連れで帰ってきた妹(早織)と喧嘩して出ていくハメになり、行きつけの100円ショップの店員のアルバイトを始める。人のいい店長(宇野祥平)は毎日18時間働いてうつになり、ベテランの店員(坂田聡)はなれなれしく付きまとい、店の金に手を出してクビになった妄想気味の元店員(根岸季衣)は勝手にバックヤードに入ってきて廃棄品を持ち帰り、本部からの巡回社員(沖田裕樹)はそれを口うるさく咎める中、一子は不器用に何とか仕事をこなしていた。ある日、一子が店への往復の時に、よく覗いていたボクシングクラブで練習をしていた37才のボクサー狩野(新井浩文)が店を訪れバナナを買いバナナを忘れていった。それを届けにいったのをきっかけに狩野に誘われた一子は、狩野の試合を見に行ってボクシングに惹かれ、狩野の引退と入れ違いにボクシングクラブに通って練習しプロテストを目指すが…というお話。
太って動作も遅く目標もなくだらだらと生きていた一子が、ボクシングの練習を始めて体も締まり俊敏になり周囲の反対を押し切ってプロボクサーを目指して強い意志を示す前後半の変化が見どころの作品です。あえて変化を見せるために前半は詰め物でもして太く見せヨタヨタと緩慢な動作をしているのかなとも思いますが、ダイエット法の広告の使用前・使用後のような印象です。
ボクシングクラブでの練習風景では、縄跳びとシャドウボクシングの様子が典型的です。シャドウボクシング、確かに体の切れがよくなって俊敏な動きを見せるのですが、視線が下を向いているのが、スパーリングや実戦経験のなくシャドウボクシングだけで上達した弱みかなと思えます。
格差社会の負け組のいかにもかっこうわるい不器用な一子の、恋と闘争が、終盤少し小気味よく、微笑ましく思えます。百円ショップ(コンビニ)に集う少し病んだ下流の人々の様子が描かれ、それが一子の本社巡回社員の指示への反感と元店員への連帯感、終盤の元店員の反乱で少し清涼感をもたらすところが、庶民目線で好感が持てます。
一子と狩野が、今どき、そしてスポーツをする人にはあり得ないほどニコ中なのは、煙草会社の陰謀かと思えてしまうのですが、私の考えすぎでしょうか。
(2015.1.11記)
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