たぶん週1エッセイ◆
映画「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」

 高給につられて集まった男女10人が7日間閉じ込められた館で殺人と推理を繰り返す心理サスペンス映画「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」を見てきました。
 封切り2週目日曜午後の上映はほぼ満席。観客層は若者が圧倒的に多く、若者カップルが多数派でした。

 時給11万2000円で7日間の心理学の実験を行うという広告につられて集まった男女10人が人里離れた「暗鬼館」に閉じ込められる。実験は7日間が経つか生存者が2名になって実験が継続できなくなると終了する。ルールは@午後10時以降は個室で過ごす、個室外にいるところを巡回ロボット「ガード」に発見されたときは失格となり「排除」される、A事件が起こったときは、誰かが「探偵」となり犯人を推理して解決する、解決は多数決による、解決したら「探偵」「犯人」「遺体」にボーナスポイントが発生して報酬が2倍になるというもの。個室には部屋のカードキーで開けられる箱が置いてあり、美人OL諏訪名祥子(綾瀬はるか)の誘いで参加したフリーター結城(藤原竜也)の部屋の箱にはサーベルが入っていた。2日目朝、参加者の中で憎まれ口をきき他の参加者を連続殺人犯に似ているなどと言いつのっていたリストラされたおやじ西野(石井正則)が射殺死体で発見された。互いに疑心暗鬼となる中で研修医を名乗る大迫(阿部力)は、西野から通り魔事件の犯人に似ていると言われていた岩井(武田真治)を犯人と名指しした。結城は簡単に決めつけるのはおかしいと抗議し、それぞれの部屋の武器を調べて拳銃を持つ者を明らかにすべきだと主張したが、大迫に却下され、多数決で岩井が投獄されてしまう。部屋に戻った結城の箱には、いつの間にか拳銃が入っていた。猜疑心を強める参加者の間でさらなる殺人事件が発生し・・・というお話。

 閉じ込められた中での心理ゲームという形式で「カイジ」「ライアーゲーム」の2匹目・3匹目のドジョウを狙う映画です(公式サイトでも「デスノート」(06年)にはじまり、「カイジ 人生逆転ゲーム」(09年)、「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」(10年)と続く心理戦ムービーの系譜に2010年秋、決定打が登場する!と書いています)。ゲームをめぐるシステムとしては「デス・レース」のパターンを使っています。
 しかし・・・拝金主義的なゲームで人の命を軽んじていることへの私の嫌悪感はおいて純粋にエンタメとしてのできを見ても、「カイジ」にも「ライアーゲーム」にも、また「デス・レース」にも大きく遅れを取っていると、私は思います。
 この種の作品では、ゲームのルールを明確にし、もちろん抜け穴がないとミステリーが成立しないのですり抜ける者はいるとしても、ルールが厳格に守られているという建前が必要です。ところが、この作品では、個室で過ごすルールは「ガード」の巡回が10分ごとということで早々に無視されてみんなが午後10時以降に出歩き、解決は多数決のルールも、多数決が実施されたのは1回だけで、しかも終盤では多数決もなく結城のつぶやきが直ちに解決と認定されるなど、ルールが守られているという建前さえありません。ルールが公然と無視されるようになったら「ゲーム」でも「ミステリー」でもあり得ないと思うのですが。

 むしろ見るべき点は、この疑心暗鬼・猜疑心の渦の中で、信じ合おうとする結城の姿勢が一部では奏功し一部では挫折する、その人間性への信頼と苦渋というところにあるような気がしました。

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