庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ジャッジ!」
ここがポイント
 少年の心を持つ不器用な主人公が周囲を変えていくヒューマンストーリーとそういう純朴な男に惹かれる女のラブストーリー
 作品全体がTOYOTAとエースコックのCMといってよい
 広告業界の裏側を描くスタンスを示しながら、特定の企業にすり寄るこの作品は、広告業界のしたたかさ、図太さ、腹黒さを感じさせる

Tweet 

 広告業界ドタバタコメディ映画「ジャッジ!」を見てきました。
 封切り2週目土曜日、シネ・リーブル池袋シアター1(180席)午後0時20分の上映は4割くらいの入り。

 見る人を幸せにするようなCMを作りたいという夢を持って広告代理店「現通」に就職したがうだつが上がらず上司大滝一郎(豊川悦治)にいいように利用されている落ちこぼれクリエイター太田喜一郎(妻夫木聡)は、大滝に代わってサンタモニカ国際広告祭の審査員を務めるよう命じられる。仕事と英語ができるギャンブル狂いの同僚大田ひかり(北川景子)を会場がラスベガスに近いことを餌にニセ妻として同行させた太田は、現地に着いた後で大滝からクライアントの息子が道楽で作った駄作のちくわCMを入賞させないとクビだと知らされる。太田はアニメTシャツや大田のちくわプレゼンで審査員たちから好評を得るが、他の審査員たちが行っている取引や裏工作が気に入らず、自社出品のCMへの支持を持ちかけられずにいた。ライバル代理店の凄腕クリエイターはるか(鈴木京香)の作ったTOYOTAのCMができがいいのに審査会幹部の工作で予選落ちしたのを知った太田は憤り、そんな太田の姿を見てあんないやな女放っておけと大田はすねるが…というお話。

 かって広告祭グランプリを取った「逆風は、振り返れば追い風だ」という靴のCMを見て、見る人を幸せにするようなCMを作りたいとクリエイターを志した、少年の心を持つ不器用で純朴な主人公が、試行錯誤しつつも志を曲げずに進むことで周囲に温かい気持ちを拡げ人々を少しずつ変えていくというパターンのヒューマンストーリー+そんな不器用で純朴な男に惹かれていくラブストーリーです。
 かつて同じ広告祭の審査員だった謎の男鏡(リリー・フランキー)の怪しげでいい加減なアドバイスにしたがって他の審査員を説き伏せていく太田、最後には夢が叶いそうでもありますが、かつて同じ道を行った先輩の鏡が今資料室に独り押し込められているのを見るとその将来は果たして…

 エンドロールで「この番組は、TOYOTA、エースコックとご覧の各社(丸井を含む)の提供でお送りしました」とするのがふさわしい映画でした。
 広告業界をパロディ化しあるいは広告業界の裏側を批判的に描写して、裏工作はせずにいいものはいいと評価すべきだというテーゼを示しながら、しかしこの作品は全体としてTOYOTAのCMといってよい内容(作品中で使われているTOYOTAのCM:TOYOTA human touch は、実際に2006年のカンヌ国際広告祭で銀賞をとったものですが、実際にはその時のグランプリだったGUINNESSを押しのけて、「ビールのCM」よりずっといいというのは「ヨイショ」以外の何ものでもないのでは?)。さらにエースコックもこの映画で度々登場するCMとタイアップして映画公開直前に映画で使われたCMに登場するキツネうどんを新発売。広告業界のしたたかさというか図太さというか腹黒さを感じます。
 内容からしたら映画にしなくてもテレビドラマでやってきちんとTOYOTAとエースコックの提供と表示した方がいいんじゃないかと思いましたが、考えてみたらあまりにも露骨でへたするとテレビだと番組扱いできない(全体がCMとみなされる)リスクがあるから映画にしたのかも。
 コメディとしてのできは悪くないけれど、あまりにも特定の企業への媚びの姿勢が強くて、その点で後味が悪いというかしらける思いでした。
(2014.1.18記)

**_**区切り線**_**

 たぶん週1エッセイに戻るたぶん週1エッセイへ

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ