たぶん週1エッセイ◆
映画「きみの友だち」
ここがポイント
 予告編やポスターは恵美と由香の友情物語だが、実際は青春群像もの
 この映画、音楽がけっこういいと思う

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 交通事故で左脚が不自由になり友だちからも距離を置きがちになる恵美が、腎臓病を患う由香との友情、弟のブンやその友人たちとのつきあいを通じて友情を見つめ続ける青春映画「きみの友だち」を見てきました。
 重松清原作だし、映画見る前に読もうと思ったんですが、結局読む機会なく読まずに見てしまいました。原作読んで見に行くと原作との関係ばっかり気になりますしね。

 前半、小学生の恵美と由香が友だちになるまで。クラスで大縄が跳べないからと縄回し役を押し付けられる足の不自由な恵美と病弱な由香。雨の日に友だちがいっぱいの傘から由香の傘に移ろうとして交通事故にあった恵美が、「半分は由香ちゃんのせいだから」と言い、泣きそうになる由香。「雨の日松葉杖を突きながら傘差して歩くの大変なんだから」と言われて雨の日恵美の家まで一番大きな傘を持って迎えに行く由香。子どもの残酷さと純真さが、見ていてとても切ない。
 いつも一緒にいる恵美と由香の思いを、恵美は「歩く速さが一緒だったから」、由香は友だちがたくさんいるより恵美ちゃんとたくさん一緒にいる方がいいというけど、恵美のどこが好きかといわれるとわからないし、優しい?と聞かれると、恵美ちゃんはすぐ怒るって・・・でも、そのあたりの作らないところが等身大でいいんじゃないかと思います。
 予告編やポスターを見ていると、この恵美と由香の友情が中心の映画だと思いますが、実際は恵美と由香の友情のシーンは予告編のシーンの他は少しだけで、そこが一番意外でした。

 映画の展開は、フリースクールのボランティアになった20歳の恵美とそのフリースクールを取材に来たカメラマンのつきあい、小学生から中学生の恵美と由香と同級生のハナ、恵美の弟でモテモテ秀才サッカー選手のブンのまわりで不器用に生きる三好君と佐藤先輩の高校時代の3つのストーリーが行ったり来たりしながら進み、ちょっとわかりにくい。最初ブンと三好君の話が出てきたときにはブンって恵美と同級生かと思いました。ブンと三好君と佐藤先輩の話に時々恵美が卒業生として絡んできます。で、恵美は高校時代は出て来ないのですが、そのあたりは終盤になってようやく頭の整理ができる感じ。
 予告編のイメージで恵美と由香の友情物語と思ってみていると、ブンたちの話が展開している間、これっていつになったら恵美と由香のところにつながるんだろって思います。そうじゃなくて青春群像ものなんですね。でも、時々20歳の恵美に戻ったりするから、ますます群像ものという把握が遅れるんです。そのあたり、不親切な感じがします。

 ブンたちの物語も高校生ものとしてみれば、わかるし悪くもないけど、台詞のキレや感情の乗り方、感じるせつなさからしてやっぱり恵美と由香の物語の方が上です。制作側もそれを意識しているから、前半と最後に恵美と由香を持ってきているのでしょうし、予告編は恵美と由香ばかりなんでしょう。
 私としては、ブンたちの物語は落として、20歳の恵美ももっと減らして恵美と由香の友情物語に純化した方がよかったと思います。

 この映画、音楽がけっこういいと思いました。一青窈の情感のこもった主題歌も印象に残りますし、松崎ナオのオープニングもいいんですが、実は私が一番気に入ったのは Au Revoir Simone の挿入歌の透明感のある抑えめのハーモニー。こういう小品の使い方のセンスがいいですね。 

(2008.8.4記)

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