庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ラストマイル」
ここがポイント
 大企業の論理、大企業へのマスコミの忖度が問われていると思う
 物流労働者の置かれた状況を考える機会にはなると思う
    
 巨大ショッピングサイトの配送物への無差別爆弾テロを扱った映画「ラストマイル」を見てきました。
 公開3日目日曜日、新宿ピカデリーシアター2(301席)午前10時50分の上映は9割くらいの入り。

 世界的なショッピングサイトデイリーファースト(Daily Fast)関東センターに新センター長舟渡エレナ(満島ひかり)が遠方から赴任してきたブラックフライデーの日、委託先の羊急便が配送した荷物が爆発する事件が相次いだ。最初の2件では爆発した荷物中の商品が同じだったため、舟渡はその商品の出荷を止めて検査をし、爆弾が入っていないことを確認して配送を再開したが、3件目は別の商品が入った荷物が爆発し…というお話。

 利便性を追求して構築されたサービスへの依存の危うさ、社会のインフラとなっているサービスを利用した無差別テロが組織によらずに一個人に容易にできてしまうことを問う作品です。

 事情を知らせないまま隠蔽工作のみを指示して派遣するアメリカ本社、犯行予告とさらなる爆破の危険に気づきながらそれを週末のニューヨーク市場が閉まるまで(日本の土曜日午前6時まで)警察に知らせないという判断(人命より株価!)、委託先に対する配送料の徹底した買い叩き、爆発物検査の委託先への押しつけなど、さまざまな場面で大企業の論理が描かれています。
 また、連続爆破事件を報じながら、それがすべてデイリーファーストの配送物だということに言及しないマスコミの巨大企業への忖度も表れています(そこは明示的に指摘されているわけではないのですが。ニュースではそれに言及せず、SNSで話題になってからSNSで話題になっていることだけ報じているというのが、今の日本のマスコミを表しているように思えました)。
 それでいいのかという問題提起ではありますが、結局それが通ってしまうことへの諦めのほろ苦さがあります。

 物流センターでの労働問題、配送労働者の劣悪な労働条件など、現在の日本での労働者の置かれた状況を考えさせられるところもあり、テレビドラマ系のメジャー作品としては頑張った方かなと思いました。
(2024.8.25記)

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