庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「スーサイド・ショップ」
 自殺用品専門店を営む家族を描いたブラックユーモアアニメ「スーサイド・ショップ」を見てきました。
 封切り2週目月曜日祝日、全国3館東京では唯一の上映館ヒューマントラストシネマ有楽町シアター1(161席)、台風東京通過後の午後3時30分の上映は5〜6割の入り。観客の多数派は若者でした。

 人々が暗い顔をしてさまよい、公共の場所で自殺をすることが禁じられ、警官が自殺死体を見つけると違反切符を切る陰惨な都会で、自殺用品専門店を営み、確実に死ねる、死ねなかったら返金するといって、毒物や首つり縄、腹切りセットなどを売るデュヴァシュ一家。その経営者ミシマと妻ルクレスの間に産まれた赤ん坊のアランは、一家の伝統に反して、よく笑い、陽気な青年に成長する。死にたいと漏らしながら商売柄自分が死んではいけないと両親に諭される姉マリリン、死を売り物にすることに内心悩み精神科医に休養を指示される父ミシマらを尻目にアランは級友とある計画を進め…というお話。

 開始早々の多くの人が死にたいと思いさまよう陰惨な都会の様子は、昨日「日本の悲劇」を見ていたこともあり、ヨーロッパの中では自殺率(人口10万人あたり自殺者数)が高いフランスよりも自殺率が高い(近年ではフランスの約1.5倍)日本の近未来を、私に思い起こさせました。
 このアニメ上の都会では公共の場所での自殺が禁じられ、自殺者・自殺未遂者には違反切符が切られて、自殺未遂者は本人が罰金を取られ、自殺者の場合遺族が罰金を請求されるという設定です。自殺死体を見つけると、警察官はその場で切符を切って遺体の手に握らせ、遺体を放置したまま立ち去ります。
 こういった都会の陰鬱な姿と、自殺用品専門店の様子をブラックユーモアを込めて紹介する序盤は、変わった雰囲気もあり、興味を持って見ていられましたが、アランが生まれて以降のストーリーが展開していく部分は、エピソードが少なくひねりが足りず、間が持たない印象です。79分(1時間19分)の短い作品なのですが、それでも持て余して途中で眠くなりました。ストーリーで持たせるなら、あと2ひねりくらい必要だったんじゃないでしょうか。

 アランの父がミシマと呼ばれているのは、最初は単にフランス人にしては変な名前だと思っていただけですが、ミシマが体育教師の客に、校庭で自殺するなら切腹がいいと腹切りセットを勧め、その後も日本刀を振り回す様子で、あぁ三島由紀夫から取ってるんだと気がつきました。フランス人には、腹切り(HARAKIRIは、フランス人が読むと、日本人には「アハキヒ」に近い音に聞こえます)といえば、いまでもミシマなんですね。

 3Dで見ましたが、平面の人物が近くにいるか遠くにいるかくらいの画面、そりゃ立体的に見えてはいますけど、これを3Dにする意味は見出せませんでした。

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