庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「午前4時にパリの夜は明ける」
ここがポイント
 成長を描いた作品なのか、特に成長しなくてもなんとかやっていけるよという作品なのか
 シャルロット・ゲンズブールの表情の変化が見どころ
  
 80年代のパリで生きるシングルマザーの姿を描いた映画「午前4時にパリの夜は明ける」を見てきました。
 公開2週目日曜日、渋谷シネクイントスクリーン2(115席)午前10時25分の上映は2割くらいの入り。

 ミッテラン政権誕生に湧く1981年5月10日のパリ、家出少女タルラ(ノエ・アビタ)はメトロの駅をさまよっていた。夫に去られたエリザベート(シャルロット・ゲンズブール)は、大学に行く娘ジュディット(メーガン・ノータム)と授業に集中できない詩人志望の息子マチアス(キト・レイヨン=リシュテル)を抱え、涙に暮れていた。一念発起して働き始めたものの入力したデータを保存せずに閉じて一日で解雇されたエリザベートは、お気に入りのラジオの深夜番組「夜の乗客」に手紙を書いて、番組に登場させるリスナーからの電話の受付の仕事を得た。パーソナリティのヴァンダ(エマニュエル・ベアール)から時に叱責されながらも、エリザベートはスタッフの信頼を得ていった。そんなある日、番組に登場したほぼホームレスの少女タルラが番組終了後行くところもなくベンチに座り続けているのを見たエリザベートはタルラにうちに来ないかと勧め・・・というお話。

 涙に暮れていたエリザベートと学校で無気力を指摘され行き詰まっていたマチアスが、タルラの闖入・存在により変化し成長して行くという作品と見るべきなのか、特に大きな事件や劇的な変化があるわけでもないので、特に「成長」しなくても一日一日を過ごし歩み続けていくことでなんとかなって行くもんだという作品と見るべきか、戸惑うところです。制作サイドでは、変わらないタルラを見せ対比することで、地味ではあってもエリザベートが成長していると見せているのかなと思いますが。
 たぶん、見どころは、シャルロット・ゲンズブールの台詞に反映されていない表情の変化なのだろうと思います。50代のシャルロット・ゲンズブールの覚悟のヌード(乳がんで右乳房切除しているという設定のためか、左の乳房を見せつけるような…)が見どころという向きもあるのかも知れませんが…
 原題は " Les Passagers de la Nuit "(夜の乗客)で、エリザベートがスタッフとなった深夜ラジオ番組のタイトルです。邦題の「午前4時」は、特に映画の中で出てこなかったと思います。エリザベートが不眠症でなかなか眠れないということくらいでしょうか。
 冒頭のシーンにミッテラン勝利の夜を採用したのは「変革と希望」への当てつけでしょうか、それとも単なる80年代へのノスタルジーでしょうか。
(2023.4.30記)

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