たぶん週1エッセイ◆
映画「リミット」

 目が覚めたら棺に入れられて生き埋めにされていたというパニックサスペンス映画「リミット」を見てきました。
 封切り4週目日曜、東京で唯一の上映館シネセゾン渋谷の午後3時からの上映は5割くらいの入り。観客層は、日曜午後の渋谷ということもあってか若者カップルが多数派。

 イラクでトラック運転手として働いていたアメリカ人ポール・コンロイ(ライアン・レイノルズ)は、バクーバ近郊で襲撃されて気を失い、気がつくと棺の中に横たわった状態で生き埋めにされていた。手元にあるのはオイルライターと携帯電話。ポールは、携帯電話で、妻、勤務先、FBIなどに電話するが、妻の携帯は何度かけても留守番電話、勤務先では緊急対応の責任者といったら人事部長に回されたあげくに留守番電話、FBIも仲間は撃たれて死んだのになぜおまえは生きていると疑い出す始末。襲撃者からは、身代金を要求する電話があり、携帯電話で人質になったというビデオを撮影してメールで送れと要求される。国務省に電話するとようやく人質交渉担当者から何とか探し出すという言葉はくるが、現実的な動きはない。襲撃者からは、ポールの職場の同僚が拉致されていることが知らされ、ポールは、ビデオ撮影に応じるなという国務省担当者を無視してビデオを送り、ビデオはYou tubeで繰り返し再生されるが・・・というお話。

 冒頭から真っ暗な画面が続き、雑音のような音声がわずかに混じるだけで、映写機の故障かと思える状況で映画が始まります。その後も、携帯メール越しにほんのわずかに登場する人質になったポールの同僚を除くと、最初から最後までカメラに写るのは棺の中のポールだけ。ポールがライターや後で見つけた懐中電灯を消すとまた画面は真っ暗で音声だけという場面も少なからず。なんといいますか、実に安上がりな撮影条件の映画だなと、思いました。
 そういう条件が、緊迫感を持続させる効果はあり、ハラハラさせられることは事実ですが。

 従業員が拉致されて生き埋めにされたのを知って、死にかけている従業員に対して携帯電話で録音記録しながら解雇を言い渡して自社との関係を断ち切る会社の冷酷さは、目を見張ります。現実の世界でも、ここまで極端でなくても、似たようなことはありがちな気がしますが。
 そして、必ず君を助けるといいながら、現実には体面ばかり考えている政府機関のいい加減さも。
 ずっと留守電で電話に出ない妻、何してるんだかと思わせられますし。
 思いあまって施設にいる母に電話をしたら、母は認知症でポールのことをわかったのかも怪しげ。切ないですね。

 同じ状況になったら、自分はどうする、やっぱり同じようなことになるんだろうなと、身につまされる映画です。

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