庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「街の上で」
ここがポイント
 日常の延長と下北沢の風景・文化を描き、どこかのほほんとした切なさを味わわせる作品
 荒川のストーカー的な行為を正当化するのは、今どき大丈夫かなと懸念する
    
 下北沢の古着屋の店員の青年を中心にした青春映画「街の上で」を見てきました。
 公開4週目土曜日、東京都の「要請」によりほとんどの映画館が閉館して都内の映画館82館中14館(映画.com調べ)しか上映していない映画サービスデー、ユーロスペース:ユーロライブ(178席:販売94席)午前10時40分の上映は8割くらいの入り。

 下北沢の古着屋の店番をしている荒川青(若葉竜也)は、27歳の誕生日に恋人の川瀬雪(穂志もえか)から浮気をした、別れたいといわれたが、雪を諦められず、行きつけのバーのマスターから雪に連絡するのはもう止めろ、雪が嫌がっていると言われ、鬱屈した日々を送っていた。ライブハウスで出会った女性や行きつけの古書店の店番の田辺(古川琴音)らと微妙なコミュニケーションも持ちつつ深まらずにいる荒川に、古着屋に通って荒川がずっと本を読んでいる姿を見て卒業制作の映画に出演して欲しいという女子大生高橋町子(萩原みのり)の要請に荒川は心をときめかせるが…というお話。

 何とはない日常の延長に、ふつうの人生でありそうな小さなできごと・ラブアフェアのきっかけ・エピソードを織り込みながら、書物/出版、音楽、映画などの文化や文化とのつきあいを描いて、どこかのほほんとした切なさを味わわせる作品です。
 どうして広い家に一人で住んでいるのか、一人だけ関西弁キャラなのかなど設定に謎が多い高橋のアシスタントをする学生城定イハ(中田青渚)が、ふわっとしたいい感じでした。
 どちらかというと、心をほどきつつしんみり見る映画かと思いますが、ユーロスペースにはめったに来ないので(とっても久しぶりだったのでラブホ街の真ん中で道に迷いました (-_-; )ユーロスペースの文化なのか東京都の圧力によりほとんどの映画館が閉館したためにふだんは来ない映画難民の所業なのかわかりませんが、声を上げて笑う観衆が多数いたので、寄席を見ている感じで見ました。

 荒川がフラれた後の雪への未練がましい連絡、よりを戻そうと雪に迫り続けた様子は、マスターの言葉でしか表されていませんけど、そういう行為を正当化する、そういう人を勇気づけるというのは、今どき大丈夫かなと思いました。映像ではストーカー的な場面はなく、ストーカー行為まで正当化するということではないのでしょうけれども、ストーカー行為に及ぶ人って、自分の主観ではそんなに酷いことはしていない、自分は荒川程度だよって思っている場合が少なからずあると思います。映画が優等生的に勧善懲悪的な、迷惑行為はいつも戒められるような表現である必要はないのですが、そういうことを考えると、ちょっとどうかなと思います。

 「オール下北沢ロケ」(公式サイトのイントロダクション)だそうで、下北沢の風景・風土を味わう作品でもあります。私は、下北沢に住んだりしたことはないのですが、私のサイトのモバイル新館に掲載している小説「その解雇、無効です!2」で主人公狩野麻綾の居住地を下北沢に設定し、下北沢をロケハンしたので、見覚えのある場所も登場して懐かしく見させてもらいました。

 ところで、この作品中でおまわりさんが、自分の姉が年の離れた夫と結婚してその連れ子の姪が女優で好きになってしまった、結婚したいのだけど、いとこは4親等だから結婚できるのに、姪は3親等だから結婚できないって、2回も繰り返していっています。ちょっと、ここ、弁護士としては聞き捨てならないので、いっておきます。おまわりさん、よく聞いてください。姉の夫の連れ子(義兄の娘)と結婚するのに法律上は何の問題もありません。3親等までは結婚できないというのは、血族(血が繋がっている)の場合です。姪が姉の子(実子)だったら結婚できませんが、姉の子じゃなくてその夫の連れ子なら血族じゃないから結婚するのに法律上は何の問題もありません。だから、結婚できるかどうかは、法律の問題じゃなくて、姪を魅了できるかの問題なんですよ。健闘を祈る。
(2021.5.1記)

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