たぶん週1エッセイ◆
映画「マルタのやさしい刺繍」

 スイスの田舎村で周囲の反発に遭いながらランジェリーショップを開く80歳の寡婦マルタのドリーム・カムズ・トゥルー物語映画「マルタのやさしい刺繍」をみてきました。

 夫に先立たれて悲嘆に暮れる80歳のマルタ(シュテファニー・グラーザー)が、友人や息子から何か別のことを始めた方がいいと言われて思い出したのが、若いころ夫に反対されてあきらめた、自分でデザインして刺繍したランジェリーの店を開くこと。積極的な友人の「アメリカ帰りの」リージ(ハイジ=マリア・グレスナー)の励ましで試作品を作り開店準備を始めるマルタと、派手な下着なんて恥さらしだと反発する村人たち。反対の急先鋒は、マルタの息子の牧師ヴァルター(ハンスペーター=ミュラー・ドロサート)と村の代表を務める牧場主。嫌がらせに遭いながらも商品を作り続けるマルタとその美しい刺繍された下着への憧れから次第にマルタに協力する村人が増え、インターネットでの通販が成功し、ヴァルターは牧師でありながら不倫の関係を続けていることをマルタに知られて反対できなくなり、最後まで反対を続ける牧場主も村人の支持の前に孤立し、マルタが成功を収めるというお話。
 田舎の村で、ランジェリーショップなど恥さらしという保守的な村人の反対というパターンが、革新しようとするのが80歳のマルタとその友人、反対の急先鋒の保守派がマルタの息子とその世代と、老若逆転の構図が新鮮。ヴァルターも牧場主も、親を引退させて不動産を自分が使おうとしているところが共通で、老親を虐待する保守派に対する老人パワーの解放闘争という感じです。
 夢を実現するのは今からでも遅くないという、元気が出るテーマを、80歳の老人を主人公に描く、今日的でもあり温かな気持ちになれる映画です。

 スイスの山間の村の山と樹の映像がとても美しい。おばあちゃんたちの自由を求めるあっけらかんとした闘いの勝利というハートウォーミングな展開とマッチして和みます。

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