◆たぶん週1エッセイ◆
映画「瞬 またたき」
事故の際の淳一の行動を探るサスペンス仕立ての設定となっていますが、その「謎」は単純すぎ
弁護士から見ると、困った依頼者の典型とも言える (>_<)
交通事故で生き残った女性が死んだ恋人の死の真相を探る恋愛サスペンス映画「瞬 またたき」を見てきました。
封切り5週目日曜日夜の上映は、1〜2割の入り。レイトショーということもあって観客のほとんどは若者。カップルよりも女性同士の方が多めでした。
叔母の経営する花屋で働く泉美(北川景子)は、美大生だった淳一(岡田将生)とバイクに2人乗りして花見の帰りにトラックと衝突し、トラックの運転手は即死、淳一も死亡したが、自分だけは足首のねんざだけで生き残った。しかし、事故の際の記憶がない泉美は、淳一の記憶を取り戻そうとして精神科に通い、そこで見かけた傷心の弁護士真希子(大塚寧々)の事務所に押しかけて調査を依頼する。事故や淳一の記憶に迫ると倒れる泉美を心配して家族も精神科医も反対するが、泉美は真希子に調査を求め続けた。救急病院の担当医への聞き取り、警察の実況見分調書や担当警察官への聞き取り、解剖所見、そして現場調査を経て、泉美は事故の時の記憶を取り戻すが・・・というお話。
「あなたは、一瞬で愛する人を守れますか?」というキャッチコピー、精神科に通いカウンセリングを受けながら事故の際の記憶を取り戻そうとする泉美という冒頭シーンから、事故の際の淳一の行動(あるいは泉美の行動)が最大の見せ場でそれを探るサスペンス仕立ての設定となっていることが理解できるのですが、それ自体は、ある意味、見る前から予測できますし、解剖所見が出てきたところでもうはっきりわかってしまいます。だから「謎」という売り方はどんなものかと思いますが、それでもそのシーン自体は、映像で見せられるとグッとくるものがあります。
ただ・・・それに続く映像は、ちょっと、どうかなと思います。交通事故というものをきれいごとにしたくなかったんだとは思いますけど、ちょっと、グロい。
それに、泉美が、あの状況で指にこだわるのがどうも納得できません。指、指、って言ってる場合じゃないと思うんですが。
本線の「謎」が単純なこともあって、妹との関係に悩む傷心の弁護士を絡ませたところが、話に幅を持たせています。
でも、弁護士の立場からすると、こういう依頼者は困りもの。いきなりアポなしでやってくる(そもそも事務所にいない可能性が高いし、いたって他の来客とかで会ってられないのが普通)、法的な解決を求めるんじゃなくてただ「調査してほしい」って(真希子弁護士も言うように、調査するって、うちは探偵事務所じゃない)、断っても待ち伏せする(真希子弁護士も言うようにストーカーまがい)、やめた方がいいんじゃないかと言われてもどうしてもやりたいと言いながら調査が進むとやめてくれと言い出す(途中で言うことが変わる人、困るんですよね)・・・弁護士側から見ると、現実にはほとんどの場合お断りし、気まぐれで受けたらやはり後悔するのがその8割、やってみてまぁ悪くもなかったかなが残り2割ってところでしょうね。
泉美に話しかける老婆(菅井きん)が、潜水艦乗りの夫が戦死した悲しみを語るシーンは、「真夏のオリオン」(北川景子が潜水艦長を慕う役)を下敷きにしているんでしょうが、ちょっと読み方が微妙だし、内輪受けすぎ。
(2010.7.19記)
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