たぶん週1エッセイ◆
映画「セントアンナの奇跡」

 第2次世界大戦中のイタリアでアメリカ軍に従軍した黒人兵士たちの生き様を描いた映画「セントアンナの奇跡」を見てきました。
 封切り4週目土曜日、テアトルタイムズスクエアは閉館前人気のためか、抽選でお食事券プレゼントの効果か、8割くらいの入り。

 第2次世界大戦中のイタリア北部戦線で、前線でのナチスとの銃撃戦をくぐり抜けて川を渡った黒人部隊が無線で報告しても白人指揮官がそれを信用せずその地点への砲撃援護をしなかったために、敵陣内で孤立することになった黒人兵4人が、途中で遭遇したイタリア人少年を助け、トスカナ地方の村にたどり着いて、住民の信頼を得て居着いたが、そこへドイツ兵を捕虜にしたパルチザン、ドイツ兵の捕虜を求めるアメリカ軍、パルチザンの掃討戦を進めるドイツ軍が現れ・・・という戦争中のストーリーを中心に、現在ニューヨークの郵便局に勤めている元黒人兵ヘクターが客に対していきなり発砲した事件とその裁判で挟んでいます。

 大局的にはパルチザン掃討のために住民虐殺をも敢行するナチス・ドイツ軍対村人・パルチザン・アメリカ軍という対立構造なのですが、それぞれの中でさらに対立があって、人間関係がかなり錯綜しています。
 ドイツ軍にも、住民虐殺を敢行する指揮官と、その陰でイタリア人少年を逃がし、そのために上官と最後には銃撃戦になる兵隊が出てきます。
 アメリカ軍にも、黒人部隊と白人指揮官の対立があり、黒人部隊の無線での報告を信じない白人指揮官のために黒人部隊の多数が命を落とすことになります。トスカナ地方の村で落ちついた黒人兵が、イタリア人は黒人差別をしない、本国よりイタリアの方が自由を感じられるとは・・・というくだりに、制作側の思いが込められている感じです。さらに、黒人兵の中でも思惑の違いがあり喧嘩になったりします。さすがに戦闘になると一枚岩になりますが。
 パルチザンにも、裏切り者がいて、内部対立があります。
 人間関係が複雑なおかげで、銃撃シーンでも、時として誰と誰が撃ち合っているのかよくわからなくなりました。

 多数の登場人物が、人間くさく描かれ、しかしその人物が結局はほとんど殺されてしまい、私には見ていて哀しさが強く印象づけられる映画でした。戦争のむなしさ哀しさを描いているのだからそうならざるを得ないのでしょうけど。

 最後に少しだけある法廷シーンは、いかにもアメリカ映画らしいですが、事件自体の審理でなく保釈だけの審理とはいえ、突然見知らぬ弁護士がついて被告人が弁護人にあんた誰?っていうのはいくら何でも無理なんじゃないでしょうか。
 腕利きのふだんは弁護料がとてつもなく高い弁護士がいきなり登場してという点も含めて、ラストシーンはアメリカ映画らしい(「アメリカン・ドリーム」っていうのとはちょっと違うでしょうけど)ハッピーな驚きがあります。

 そういったいくつかの見どころはありますが、全体としては、戦闘シーン・流血シーンの比重が高く、2時間43分は長すぎるように思えました。

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