庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「マネーモンスター」
ここがポイント
 作品の基本線は緊迫感とスリルを味わうエンターテインメント
 パティの沈着さと瞬時の判断力、粘り強さとしたたかさ、ダイアンの正義感の設定と描写が印象的

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 財テク番組のオンエア中に株式投資で全財産を失った男が乱入し、生放送で株暴落の真相を追うというサスペンス映画「マネーモンスター」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、TOHOシネマズ新宿スクリーン8(88席)午前11時40分の上映は、ほぼ満席。アメリカでは公開初週末(2016年5月13〜15日)興収が3位、2週目6位、3週目8位で以後トップ10から消え、日本では公開初週末(2016年6月11〜12日)8位。ジュリア・ロバーツとジョージ・クルーニーのギャラだけ考えても赤字になりそう。演技のレベルは高いと思うのですが、テーマが観客の興味を惹きにくいというか宣伝とうまくマッチしていないのかも。私も、カミさんが、朝日新聞のジョディ・フォスター監督のハリウッドの女性監督に対する「セルロイドの天井」インタビューで見る気になって引っ張られて見たという状況ですし…

 財テク娯楽番組「マネーモンスター」のキャスターリー・ゲイツ(ジョージ・クルーニー)は、番組で直近に起こったアイビス社の株式の暴落についてアイビス社側のアルゴリズムのバグによるものという説明を受ける予定で、スタッフと様々なジョークを交わしながら本番に向けて準備を続けていた。本番が始まり、例によって台本通りにしゃべらずアドリブを続けるリーに苦笑しつつコントロールルームで見守る番組ディレクターパティ・フェン(ジュリア・ロバーツ)は、スタジオに箱を持って潜入する男(ジャック・オコンネル)を発見したが、リーが準備したサプライズと受け止めてカメラを向ける。しかし、男は、リーに拳銃を突きつけ、爆弾を装着したベストを着用させ、自分がリモコンから手を離したら爆発すると通告し、リーが番組で「銀行預金より安全」といったアイビス社の株に全財産をつぎ込み失ったことを告白して、アイビス社の株暴落の真相解明とアイビス社からの謝罪を求めた。公式回答を続けてモニターを銃で撃たれたアイビス社広報責任者ダイアン(カイトリオーナ・バルフェ)は、以後の出演を拒否しつつ、リーの身を案じるパティの要求に応じて、連絡不能状態のアイビス社CEOウォルト(ドミニク・ウェスト)の行方を追うが…というお話。

 作品の基本線は、乗っ取られた生放送番組を進行しながら、アイビス社の株式暴落が株式売買プログラムのアルゴリズムのバグという公式説明の真相をパティの指揮の下にスタッフが懸命に探り、真相を解き明かしていくというサスペンスで、その緊迫感とスリルを味わうエンターテインメントです。
 そこに、ウォール街に巣食う金の亡者の犯罪、隠蔽と、その周辺でバカ騒ぎするマスコミ、ウォール街とマスコミに踊らされてなけなしの金を巻き上げられる一般人という社会の構図、それが白日の下にさらされても結局はすぐにそれを忘れ、忘れたように同じことを繰り返していく現代社会の救いのなさといったことがサブテーマとして乗せられています。
 ジュリア・ロバーツ演じるパティの極度の緊張感の下での沈着さと瞬時の判断力、粘り強さとしたたかさ、そしてアイビス社CEOの愛人の広報責任者ダイアンの正義感の設定と描写が印象的です。ハリウッドでの女性監督に対するガラスの天井「セルロイドの天井」を訴えるジョディ・フォスターの信念といったところでしょうか。
 サスペンスとして引き込まれるのですが、終了後はウォール街のマネーゲームへの怒りと失望、踊らされる者たちの虚しさと悲哀にしんみりとするじんわり系の作品です。
(2016.6.19記)

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