たぶん週1エッセイ◆
映画「幸せの1ページ」
ここがポイント
 映画の魅力は11歳の少女ニム自身の魅力と、ニムと父親のジャックの親子愛に尽きる
 ファンタジー・アドベンチャーとでも割り切り、ジョディ・フォスターのことは気にしなければ、とても楽しく見られる

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 無人島に父親と2人で暮らす11歳の少女ニムが父親が遭難して帰らないピンチに襲われるアクションコメディ「幸せの1ページ」を見てきました。
 封切り2週目の土曜日ですが、かなりガラガラ。アクション/ファンタジー・コメディとしてはいいできだと思うんですが、配給会社の売り方のミスがたたってると思います。

 予告編では「ジョディ・フォスター最新作」「この秋、ジョディ・フォスターがすべての女性に贈る最高のハートフル・アドベンチャー」なんて言っていて、映像的にもジョディ・フォスター扮する冒険小説作家アレクサンドラ・ローバーが少女の危機を救いに冒険の旅をするというストーリーを流しています。こういう予告編を見て、ジョディ・フォスター主演の映画と信じて見に来たジョディ・フォスターファンは、ほぼ確実に失望して帰ると思います。はっきり言って、この映画でジョディ・フォスターは、極論すればいなくてもストーリーが成立する程度の存在です。敢えて言えば、不潔恐怖症・外出恐怖症の引きこもり女性作家が、11歳の子どもに教えられて「成長」するという、普通の成長物とは違う(成長物のパロディか)ストーリーの主役とも解釈できますが、そう見るとしても、完全に子どもに喰われてると思います。

 この映画の主役は、明らかに11歳の少女ニム(アビゲイル・ブレスリン)ですし、映画の魅力もこの少女自身の魅力と、ニムと父親のジャック(ジェラルド・バトラー)の親子愛に尽きると思います。
 何といっても、ニムがかわいくてけなげでたくましい!アシカとダンスしたりアシカに乗って泳いだり、キュートなお転婆ぶりがすごく魅力的です。かわいいだけじゃなくて、1人で火山の絶壁(「クライマーズ・ハイ」の衝立岩並み!)を登ったり、嵐で壊れたソーラー発電システムを1人で修理したりというシーンもあります。
 そして父娘関係のほほえましさが至るところで描かれています。ジャックは小舟でプランクトンの観察に行って嵐にあって遭難しても、娘のために絶対に帰りつくと執念を見せ、娘に持ち帰ると約束した新種のプランクトン(新種だったら学名に娘の名前をつける約束)を入れた容器を離しません。この父娘の信頼と愛情に打たれます。
 とにかく、ニムのキュートな魅力と父娘の絆が、宣伝は別として実際の映画では一番の見どころの映画です。娘(特に小学生)を持つ父親か、娘が欲しいなぁと思っている成人男性が見ると、きっとハマルと思います。

 予告編と映画の印象がかなり違う映画ですが、私は、よかったと思います。ふつう、予告編と映画が違うときは、予告編の方がよくて映画はつまらないのですが、この映画は逆です。また、最近は予告編にいい映像がほとんど取り込まれてて、映画本編を見ても予告編以上の見どころがなかったなんてことがありがちです。しかし、この映画の映像の魅力は、ほとんど予告編以外にあります。予告編はジョディ・フォスターを前に出すために、ニム(アビゲイル・ブレスリン)の魅力的な笑顔のシーンも、アシカのセルキーやトカゲのフレッド、ペリカンのガリレオら動物たちのフレンドリーな映像も使っていません。どう見たって、ジョディ・フォスターが青ざめてる映像よりこれらのニムと動物たちのシーンの方がずっと魅力的です。そういう意味で、予告編では今ひとつだなと思ったけど、行ってみてよかったと思う映画でした。
 タイトルも、原題は”Nim’s island”で、原作本の日本語タイトルも「秘密の島のニム」で、元からニムが主役のタイトルなんです。これをむりむり「ジョディ・フォスター主演」にするためにアレクサンドラ・ローバーの成長物語の印象に持ち込もうとして「幸せの1ページ」なる日本語タイトルがつけられています。こういう小細工するから客が入らないんだと思います。ニムの魅力と動物たちと父娘愛の感動物語で十分売れたはずなのに。

 魔法は出て来ないものの、設定はかなり荒唐無稽です。海洋生物学者の母親はシロナガスクジラの胃の中に平穏に入れてもらったが海賊船に驚いて鯨が逃げたとか、アレクサンドラ・ローバーがメールで島の位置を「南緯20度、西経162度」と聞いただけでニムの島にたどり着けたり、アレクサンドラ・ローバーやジャックが嵐の中でも方向がわかったり、ジャックが4日間も水なしでどうやって生き延びたかとか、気にしだしたらきりがありません。(ちなみに「南緯20度、西経162度」は地図に落としてみると南クック諸島の主島ラロトンガ島の北西、地図上は何も書かれていない海です)
 そういうところは気にしないで、ファンタジー・アドベンチャーとでも割り切れれば、そしてジョディ・フォスターのことは気にしなければ、とても楽しく見られる作品だと思います。

(2008.9.13記)

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