◆たぶん週1エッセイ◆
オグシオの北京オリンピック
1回戦(8月10日):小椋・潮田○2−1×リタユール・フリルクリスチャンセン(デンマーク)
やっぱりバドミントンはメンタルの要素がとても大きいスポーツです。久しぶりにテレビでフルゲームの中継を見て実感しました。
昔取った杵柄組の私には馴染みにくいのですが、バドミントンでも今はラリー・ポイント制がとられ(2006年からだそうです)、それがますますメンタルの要素を重くしていると思います。バドミントンのサーブは、ベルトラインより下、手首から下でシャトルをヒットしなければならず、要するに下から上に打ちますし、卓球みたいに変化球なんてあり得ませんから、サーバーは有利ではありません。従来はサーバー側しか得点できませんでしたから、サーバーはミスをしても点を取られない、サーブが甘くて叩かれても点は取られないという安心感がありました。それが、ラリー・ポイント制になるとサーブが甘いと相手に1点献上されがちですので気が休まらないでしょう。そしてサーバー側にしか点が入らないと試合展開は比較的ゆっくりですが、レシーバーが直接得点できるとなると試合展開がかなり速くなります。サーバーが有利でないバドミントンでラリー・ポイント制を採用するのはけっこう競技の性格を変えるような気がします。
オグシオの調子は今ひとつだったと思います。最初こそ、ネット際の球も軽めのワンステップで処理していて、あぁやっぱりプロは動きが違うなんて見ていましたし、プッシュやスマッシュの連打になると軽快だし、ラリーでは高さやコースの変え方に巧さを感じました。それで13−6まで来て、楽勝ムードが出てきたところで、比較的簡単に叩かれたりミスしたりで連続得点され、なんと11点も連取されてしまいます。この間もオグシオはあまり間をとらずに単調に行って簡単にやられた感じです。デンマークペアは、オグシオのショートサービスがきれいに入ったのをまだ構えてなかったという態度で2回無効にしたり、巧く立ち回っていたようですが。格下(といっても世界ランキング14位ですが)の相手にいいようにやられたのは、アテネを故障で逃し今回がオリンピック初出場となるその最初のゲームの緊張のせいでしょうか。そのままオグシオは調子に乗れず第1ゲームを落とします。
第2ゲームは序盤競り合いの展開でしたが、途中からデンマークペアの弱気のウォッチミスが続きます。オグシオのハイクリアがギリギリに決まっていたということですが、傍目からは入っていることが明らかなハイクリアを見逃して「イン」の判定をされるシーンが重なります。不安になると、願望も含めて、アウトに見えるんですね。リードして折り返したオグシオは、しかしこのゲームでも13点のところで4点連取されます。第1ゲームの悪夢がよぎったのでしょうか。しかし、このゲームでは潮田がショートサーブが入ったときにデンマークペアの構えてないという態度にアピールしてポイントを認めさせます。こういう駆け引きに出られるのも落ちついた証拠です。その後は危なげなくオグシオが第2ゲームを取りました。
第3ゲームは、小椋が後衛の時に右サイドを抜かれるパターンが少し目につきました。最初の方では間に合っていたステップが届かず、疲れか腰痛が治ってないかという不安も持ちましたが、リプレイで見るとトップアンドバックからサイドバイサイドに移るときの潮田の判断に迷いがあって小椋が入れなかったのかなと見えます。ダブルスで難しいところですけど。そういうシーンが少し見られた以外は、第3ゲームはあまり危なげなくオグシオがとり、オリンピック初勝利を飾りました。
バドミントンのダブルスは出場チームが16チームだけですから、次はもう準々決勝。オグシオの相手は第2シードの中国ペア。次はリラックスして実力をフルに発揮できるといいのですが。
準々決勝(8月11日):小椋・潮田×0−2○杜・干(中国)
パワーの差です(◎_◎)
午前中の末綱・前田が中国の第1シード世界ランキング1位を倒しての準決勝進出で、最初は杜・干ペアも焦りがあったと思います。第1ゲーム序盤は悪くない展開でしたが、中国ペアのサイドラインを割ったと見える(私にはそう見えました)返球をウォッチしたところ、インの判定。リプレイがなかったけど、これホームタウンディシジョンですよね。オグシオがバドミントンでは珍しい審判へのアピールで粘りますが、もちろん判定は覆りません。その後中国ペアが8点連取。第1ゲームあっさりと持って行かれます。
第2ゲーム、最初のポイントはオグシオが取りますが、その後9ポイント連取されます。潮田のサーブがフォールトをとられました。中国ペアのサーブの方が最初の構えはちゃんとラケットを下げているけど打つときは手首の下かどうかかなりきわどいサーブが多い気がしましたけどね。
第2ゲームの中国ペアはほとんど隙なしでした。スマッシュの速さが違います。その上ドロップショットのコースがいい。スマッシュの威力があるからどうしても下がり気味のところへドロップをきっちり入れられると届かないか届いても甘いリターンになって叩き込まれます。追い込まれてドロップに行くと手が縮んでミスをしやすいんですが、スコアが常にリードですから、攻めのドロップができ、これがきれいに決まる。さらにオグシオの方は相手のスマッシュが威力があるのでクリアはバックラインギリギリにと思うからアウトしやすい。しかも1回戦の中継の時の解説では第2ゲームの時のオグシオ側のコートから中国ペアのコート側に緩い風が吹いているという話でした。準々決勝の生中継の解説で言ってなかったから別のコートだったりして違うのかもしれませんが。そういう事情もあってか、オグシオのハイクリアが次々とアウトになり中国ペアがそれを冷静にウォッチして得点を重ねます。
すばらしいラリーも少しありましたが、基本的には一方的なゲームで、オグシオの北京オリンピックは2戦目で終わってしまいました(T_T)
まぁ相手は世界ランキング3位ですからね。末綱・前田が世界ランキング1位を喰ってしまったので物足りなく見えてしまいますが。
追伸:末綱・前田の北京オリンピック
世界1位の中国ペアを破ったゲームはハイライトしか見れませんでした(こういうゲームはハイライトじゃなくて録画で全部見せて欲しいですよね)。その反省から、韓国ペアとの準決勝は、13日の私の夏休み開始日、LIVE中継を新幹線の時間ギリギリまで見ました。韓国ペアがサーブで何度もフォールトをとられ、その都度審判に激しい抗議。普通の(バドミントンでは特殊なサーブ姿勢をとるプレイヤーはまず見ません)ショートサーブでフォールトを取られる、それも何度もとられるということは、サーブの度にきわどいことになるわけでかなりのダメージだと思います。普通、そういう展開だと腐るもんですが、全然集中力が落ちないところがすごい。末綱・前田は第1ゲーム優勢に進め、20−18のゲームポイントになります。ここで決めれば展開が全然違ったと思いますが、ちょっと意識したのか、2ポイント連取されて20−20のデュース(ちなみに私が学生の頃は、バドミントンでは15点1セットで13−13か14−14になると5点ゲームか3点ゲームで勝負を決める「セッティング」というルールでした。おじさんのつぶやきです)になります。ここで韓国ペアは息を吹き返したように、スマッシュを入れその次のプッシュがネットイン。20−21とされた次はものすごいすばらしいラリーが延々と続いた後最後に末綱・前田ペアが間に来た球をお見合いしてジ・エンド。第2ゲームは気落ちしたのかいいところなく敗北。やっぱり執念の違いでしょうか。
15日の3位決定戦。世界2位の中国ペアとの闘いも第1ゲームは優勢に進めて17−14まで来ましたが、ここから7ポイント連取されて第1ゲーム逆転負け。こちらの中国ペア、オグシオが負けた世界3位ペアほどスマッシュの威力はないと思いますが、攻めが積極的で、トップアンドバックになったときの前衛が少しでも浮いた球はきちんと叩いてきます。受けに回る時間帯が多く、立ち位置が後寄りになったためにドロップに対応できなかったりスマッシュやプッシュを受ける打点が低くなってネットにかけることが多くなったのが敗因でしょう。第2ゲームは最初から7ポイント連取されていいところなく敗北。
それにしても、メダルのかかった3位決定戦のライブ中継を、途中で打ち切ったフジTVのあの放送は何だったんでしょう。中継でも最初は解説なしで、どうみてもバドミントンのことが何一つわかっていないキャスターのとんちんかんなコメントだけで(むしろ音声なしの方がよかったくらい)やってましたし。ライブ中継中に進行に関係なく1分間CMを入れてしかもCMの間の進行状況の解説さえしない他の競技での信じがたい放映もあわせ、これだから民放でのスポーツ中継は見たくないと、改めて痛感しました。
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