庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「思い、思われ、ふり、ふられ」
ここがポイント
 相手のことを考えてるけど実は見えてない、自分の気持ちをうまく伝えられない、不器用な青春の恋愛模様が見どころ
 家族のしがらみや将来をめぐる親との対立などによる閉塞感にどう対応するかもテーマになっている
  映画「思い、思われ、ふり、ふられ」:庶民の弁護士 伊東良徳
 同じマンションに住み同じ高校に通う4人の高1男女の恋愛模様を描いた映画「思い、思われ、ふり、ふられ」を見てきました。
 公開3日目日曜日、新宿ピカデリーシアター3(287席/販売135席)午前11時30分の上映は、40〜50人の入り。

 自分に自信がなく消極的な高校1年生市原由奈(福本莉子)は、駅で由奈に借金を求めてきたのをきっかけに友達になった山本朱里(浜辺美波)に、絵本の王子様そっくりな男がいたと相談していたが、同じマンションに住む朱里の部屋を訪ねると、その男山本理央(北村匠海)が出てきて驚く。理央は朱里に告白するつもりだったその日に理央の父と朱里の母が再婚して義姉弟となってしまい、告白できないまま一緒に住んでいた。朱里は2人を部屋に置いて「買い出し」に出ると言って近くの公園で時間を潰していたが、やはり同じマンションに住む由奈の幼なじみ乾和臣(赤楚衛二)に声をかけられて意気投合する。図書館で理央に数学を教えてもらうようになった由奈は、理央の励ましもあって理央に告白するが、断られ、でも告白することで自分が変われたと感じ、自分が理央の相談相手になれる友達になると決意する。雨の日の帰り道、傘を差しだして一緒に帰る際、路上で理央は朱里にキスをするが…というお話。

 自分の気持ちをうまく伝えられない、相手の気持ちが読めない、告白してもフラれたらどうしようという不安、その中で自分は恋の駆け引きができているつもり、そういう不器用な青春の恋愛模様が見どころになります。
 そういうものだから、しかたないと言えるのですが、キスをして朱里に「ノリでやっていいことと悪いことがある」と叱り飛ばされた理央。器のレベルで朱里に届かず頭が上がらないのだとしても、「ごめん。朱里の言うとおりだ、ノリでやっていいことと悪いことがある」はないでしょう。ここは、あくまでも「ノリでしたんじゃない。ずっと朱里のことが好きなんだ。わかってるだろ」でしょ。

 もう一つのテーマ。家族のしがらみと将来/進路をめぐる親との意見の対立などから、将来と日常をめぐる閉塞感にどう対応するかが、「ここではないどこか」に行きたいという朱里と、高台の公園(ロケ地は神戸の大丸山公園だそうです)からキラキラと輝く特別な場所を見つけて行ってみたが、行ってみるとふつうの住宅地ふつうのビル等があるだけだった、「ここではないどこかなんてない」という和臣のやりとりに象徴されます。
 映画制作の途を希望する和臣が朱里に勧めた恋愛映画「アバウト・タイム」は、過去にタイムトラベルできる男が、よりよい恋愛ができるようにタイムトラベルの試行錯誤をするが、結局は「今ではない時」に自由に行けてもやはり君を選ぶというような作品です。みんなが幸せになれるような選択を模索するという朱里たちの志向とマッチするとも言えますが、「ここではないどこか」に行きたいという希望との関係は微妙です。

 朱里が和臣のところまで持っていったクリスマスケーキ、特別に手荒にしてるわけじゃないですが、あれだとたぶん、ケーキがどこか崩れてると思うんですが…
(2020.8.16記)

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