たぶん週1エッセイ◆
映画「RAILWAYS」

 中井貴一主演の49歳男の人生再挑戦映画「RAILWAYS」を見てきました。
 封切り7週目土曜日午前11時台の上映でしたが、まさかの満席。ロードショー上映は終わり現在東京では2館だけの上映ですが根強い人気があるようです。観客層は中高年が多めですが、若者層も結構いました。

 大手電器会社の経営企画室長の筒井肇(中井貴一)は、専務から取締役への抜擢をちらつかされながら、リストラの断行を指示され、同期入社の親友川平(遠藤憲一)が工場長を務める工場の閉鎖を決定した。仕事一筋で家庭を顧みない筒井に娘倖(本仮屋ユイカ)は反発し、妻由紀子(高島礼子)も家庭をあきらめてハーブショップを始めて遅くまで帰宅せず、家庭はばらばらになっていた。そこに島根の田舎に住む母絹代(奈良岡朋子)が心筋梗塞で倒れ、島根に残って絹代の世話をするという倖に絹代を置いて帰ることを責められ、さらには家庭を顧みなかった過去を責められながら東京と島根を行き来する肇に、川平が交通事故で死亡したとの知らせが入り、さらに絹代が癌だとの検査結果が知らされる。絹代の家で子どもの頃のアルバムを見るうちに地元の一畑電鉄の運転士になることが夢だったことを思い出した肇は、会社を辞め、一畑電鉄の運転士に応募する。そのことには反対せず背中を押しつつも自分は東京に残るという妻由紀子とは別居生活を続けながら島根で運転手の仕事を始めた肇は・・・というお話。

 仕事と生き甲斐、人生の再スタート、仕事と家庭、老親の看取り、単身赴任・別居と夫婦といったテーマが絡まり合い、考えさせられます。
 副題の「49歳で電車の運転手になった男の物語」が示唆するように、人生の再スタート、やりたかった仕事は、夢は・・・という方が主題になっています。
 家庭系のテーマはきっかけにはなっていますが、簡単には解決できない感じです。病気の祖母を置いて帰るなという倖の訴えは、地元の一畑電鉄の運転手になっても運転中は病院に駆けつけられないという姿勢ではじかれます。妻との間では遠く離れて暮らすことになりますし。このあたりは、東京で仕事を続ける妻と島根で入院中の母のどちらを選ぶのかという、もともと厳しい問題設定で、どちらにしても簡単な解決はないでしょうけど。娘が島根に滞在して祖母の看病をすると言うので、肇が島根に行く方に分がある感じですが、娘が東京に残って肇だけが島根に行ったらかなりニュアンスが変わりますし。

 古い他社のお下がりの車両を使って運行する一畑電鉄の職人気質の車両課長(渡辺哲)が、説明書も部品もない古い車両を手作業で直していく様子(電車の木製のドアをかんなで削ったり!)や、客がホームに落とした荷物を運転手が拾い集めて3分遅延とかしながらの運行とか、ほのぼのしています。
 全体として、そういう暖かさに包まれてじわっとした感動を持てる映画になっています。
 「ALWAYS 3丁目の夕日」シリーズの企画制作会社が何匹目かの土壌を狙って、タイトルもそれを連想させて「RAILWAYS」っていうのが、あざとい感じでちょっといやですけどね。

 ところで、子どもの頃から一畑電鉄の運転士になるのが夢で学生時代には鉄道研究会に所属していた肇は、妻に運転士になると打ち明けたときに、「いつかそう言うと思っていたわ」と言われて驚き、学生の頃部屋にそういう雑誌が隠してあったと指摘され驚きます。究極のオタクとも位置づけられる「てっちゃん」(鉄道マニア)は、やはりその趣味を妻にも隠し通そうとするのでしょうか。

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