たぶん週1エッセイ◆
映画「乱暴と待機」

 本谷有希子の芝居を映画化した屈折した恋愛映画「乱暴と待機」を見てきました。
 封切り2週目土曜日、東京で唯一の上映館テアトル新宿の一応午前中の上映は3〜4割くらいの入り。観客層は男性一人客が多数派でした。

 事故で両親を亡くしたことと脚が不自由になったことの復讐をするためといって5年前に幼なじみの奈々瀬(美波)を自宅に連れ帰り2段ベッドの上下で暮らす山根英則(浅野忠信)は、天井の板をずらせて天井裏に上れることを知って以来2年にわたって奈々瀬にはマラソンに行くといって天井裏から奈々瀬の行動を覗き見し続けていた。近くに引っ越してきた無職の番上(山田孝之)は引越の挨拶の際に極端に人を嫌われることを恐れる奈々瀬の行動に関心を持ち、妊娠中の妻で実は奈々瀬の高校の同級生だったあずさ(小池栄子)に隠れて奈々瀬に言い寄り、奈々瀬が断れないのをいいことに強引に肉体関係を持ち続けた。奈々瀬に高校時代から恨みを持ち、番上との関係を察知したあずさが現場に踏み込んで包丁を振り回し奈々瀬に斬りかかり、天井裏から覗いていた山根は・・・というお話。

 元が舞台だということもあってか、浅野忠信と美波のやりとりが不自然に大仰な感じがします。浅野忠信はずっと間がずれてるというか、ぼけた感じで、それで笑いを取っていましたけど。
 原作でも山根の屈折ぶりがストーリーやテーマの軸になっています。その点、浅野忠信の間のずれ方は、やり過ぎの感はありますが、そういう感じかなと見えますし、天井裏から覗き続けたり、番上を拒めない奈々瀬の姿を見てショックを受けたりは、ふさわしいのですが、終盤での脚は治ったとか、10か月で音響会社の社長になってしまうとかは違和感がありました。

 私の目には、番上の卑劣さが目に付きますし、あずさの高校時代の恋人が奈々瀬に言い寄って奈々瀬が断れずあずさが「選ぶんならあずさより奈々瀬」といわれたことにしてもその彼があずさとつきあいながら奈々瀬に言い寄ったわけですし、いずれの場合も言い寄られて(それも番上についてはかなり強引に)断れなかった奈々瀬が悪いと言い続けるあずさの感覚は、わかりにくい。山根が奈々瀬には拒んで欲しいと思い拒めない奈々瀬にショックを受けるのはわかるけど、あずさにしてみれば、奈々瀬が拒んだとしてもどうせそういう男なんだから次の女に言い寄るだけじゃないでしょうかね。それはやっぱり男の視点で、山根側から見るからなんでしょうか。

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