たぶん週1エッセイ◆
映画「サガン 悲しみよこんにちは」
ここがポイント
 若くして名声(毀誉褒貶)と大金を手にした者の栄枯盛衰がテーマ
 500万フランの印税を、使っちまえ、お前の歳ならそれが肥やしになると即答する父親もすごい

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 フランスのベストセラー作家フランソワーズ・サガンの半生を描いた映画「サガン 悲しみよこんにちは」を見てきました。
 封切り10週目土曜日、東京では現在唯一上映のパルコ調布キネマ初日、4割くらいの入りでした。

 18歳の夏休みに書いた小説「悲しみよこんにちは」がいきなり大ヒットし批評家賞を受賞、ベストセラー作家の仲間入りをしたサガン(シルヴィ・テステュー)。その後も小説は売れ続けますが、取り巻き連中に大盤振る舞いするなどの浪費を続け、スピードオーバーの自損事故で瀕死の重傷を負い、その際に投与されたモルヒネが癖になったこともあってコカインの吸引を続けるなど荒れた生活のため、次第に借金が増えていく。2度の結婚も破綻し、生涯の友人ペギー(ジャンヌ・バリバール)を癌で失い、息子とも疎遠になり、孤独な晩年を過ごすというお話。

 若くして名声(毀誉褒貶)と大金を手にした者の栄枯盛衰というか末路という「祇園精舎」的な一般論としても、入りやすい話ですが、ちょっともの悲しい。
 しかし、サガンの立ち居振る舞いは、孤独に打ちひしがれ、借金まみれになり、落ちぶれた場面でさえ、どこか洗練された感じで、ほのかな憧れを感じさせます。

 それにしても、カジノで1晩で800万フラン(当時のレートだと5億8000万円くらいらしい)勝って、それで邸宅を買ったとか、やはりカジノで勝った80万フランを無造作に車から飛び散って行くにまかせたりするシーンは、いくらお金にこだわらない、お金の話は嫌いというサガンにしても凄すぎ。
 「悲しみよこんにちは」の印税が500万フラン(当時のレートだと3億6000万円くらいらしい)払われるという知らせをサガンから電話で聞いて、使っちまえ、お前の歳ならそれが肥やしになるという趣旨のことを即答する父親もまた凄い。結果的には、そういう調子で浪費を続けたためにサガンの後半生が破綻したわけですけど。
 サガンの得た印税は「悲しみよこんにちは」だけでも5億フラン(当時のレートで約364億円だって)。その後の小説も次々とヒットを飛ばしたわけですから、生涯収入はとんでもない金額のはずですが、それでも借金漬けになるって・・・「稼ぐに追いつく貧乏なし」って嘘なんですね。

(2009.8.9記)

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