たぶん週1エッセイ◆
映画「砂漠でサーモン・フィッシング」
 イエメンの砂漠でサーモン・フィッシングをしたいという破天荒なプロジェクトに翻弄される男女の関わり合いを描いたハート・ウォーミングストーリー「砂漠でサーモン・フィッシング」を見てきました。
 封切り2週目土曜日、ヒューマントラストシネマ渋谷シアター1(200席)午前9時50分の上映は1割くらいの入り。

 政府機関に勤める水産学者のジョーンズ博士(ユアン・マクレガー)は、イエメンのシャイフ(アマール・ワケド)の投資コンサルタントのハリエット(エミリー・ブラント)からシャイフがイエメンの砂漠でサーモン・フィッシングをしたいと言っているが実現可能かと聞かれ、不可能と一蹴した。ハリエットの調査でイエメンの砂漠に大きな帯水層があり地下には低温の水が大量にあること、緑化プロジェクトで既にダムが建設されており川を作ることができることを知ったジョーンズ博士は、このプロジェクトが「理論的には」可能(火星に行くことも理論的には可能)として、費用は5000万ポンド(現在の為替レートで約62億5000万円)と当てずっぽうに伝えたところ、シャイフから直ちに5000万ポンドの送金があった。アフガニスタンでイギリス軍が犯した失態で窮地に追い込まれたイギリス政府の首相広報官パトリシア・マクスウェル(クリスティン・スコット・トーマス)は部下に中東に関する明るいニュースを1時間以内に探すよう厳命し、部下が見つけたこのプロジェクトを外交上の重要課題として実現を命じ、ジョーンズ博士は上司からこのプロジェクトへの専従を命じられる。シャイフに会いスコットランドで一緒にサーモン・フィッシングをして意気投合し、プロジェクトの実現に向けて手配をするうちにジョーンズ博士は、共働きの妻がジュネーブへの赴任を相談なく決めてしまい夫婦間の亀裂が表面化したこともあって、このプロジェクトにのめり込んでいくが、つきあい始めて3週間の恋人ロバート(トム・マイソン)が軍の作戦で砂漠の中で行方不明となったことを知らされたハリエットは自宅に引きこもってしまう。果たしてプロジェクトは実現するか、ジョーンズ博士とハリエットの思いは・・・というお話。

 妻は有能なキャリア・ウーマンで夫はあまり勤労意欲のない釣り好きの研究者という中年夫婦の危機と、交際し始めて3週間の恋人が軍事行動で行方不明・生死不明となって悲しみに暮れつつ恋人の顔もはっきり思い出せないと嘆く独身キャリア・ウーマンの恋の選択を組み合わせ、まっすぐには進めないラブ・ストーリーがメイン・ストーリーになっています。
 それにばかげた道楽を求めているように思えるシャイフの郷土への思い、子育てに翻弄されながら強気の決断・指示を繰り返す首相広報官の強烈な個性が相まって、コミカルな要素をうまく含んだハート・ウォーミングストーリーに仕上がっています。
 登場する主要な女性がいずれもやり手のキャリア・ウーマンで、それ故に愛を失う人、それ故に愛を勝ち取る人、愛を(たぶん)維持している(支配しているというべきか)人と3様に描かれているのでキャリアの問題からは中立になっており、キャリア・ウーマンの元気さが印象づけられます。

 中年おじさんとしては、相談なくジュネーブへの赴任を決めてしまい、仕事上の悩みを伝えても住宅ローンのために働き続けろという妻との関係に悩み、ハリエットとの関係を邪推されながら「半年後にはあなたは別れないでくれと泣きついてくる、それがあなたのDNAだ」と妻に断言されるジョーンズ博士の中年男の悲哀を、どこまでが他人ごとでどこまでが他人ごとでないかと切なく味わうお話かなという感じもします(‥;)

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