庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「さようなら」
ここがポイント
 反政府的な要素が多い作品で、あぁ日本でもこういう映画が作られているんだと感心した
 白人女性に恋した在日韓国人青年が南アフリカでの逆差別の訴えを聞き心変わりするのには複雑な思い

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 アンドロイド演劇の映画化作品「さようなら」を見てきました。
 封切り2週目日曜日、全国2館東京で唯一の上映館新宿武蔵野館1(133席)午前9時30分の上映は、2割くらいの入り。

 全国各地の原発で次々と爆発が起こり、行政が指定発表する順に諸外国に日本人が避難していく中で、取り残された人々が細々と住む近未来の日本の山村で、アパルトヘイト撤廃後南アフリカから両親と逃れて来て今は亡き父親が買ってくれたアンドロイドレオナ(ジェミノイドF)とともに住むターニャ(ブライアリー・ロング)が、在日韓国人青年敏志(新井浩文)との恋、子殺しの過去を持つ近隣のバツイチ女性佐野(村田牧子)との交遊を持ちながら、次第に周囲の人々が去り、人気がなくなり、病に朽ちていくというお話。

 全国各地で次々と原発が爆発、放射能まみれになった国土を捨てる政府、避難の順番をめぐる差別・棄民、被差別者や犯罪者など政府に嫌われた者が避難を後回しにされるとみんなが思っている社会と、実に反政府的な要素が多い作品で、あぁ日本でもこういう映画が作られているんだと、そこに感心しました。
 在日韓国人青年が、白人女性とつきあい、結婚の約束までしながら、その白人女性が南アフリカでアパルトヘイト撤廃後黒人から逆差別を受けたという過去を語るや、心変わりするという下り。差別を受けてきた者の複雑な思い、ターニャの「逆差別」の訴えに潜む自らの加害を意識しない/棚に上げた傲慢さの匂い…わかるような気もしますが、しかしそれならばターニャとの交際を始めた自分には白人女性と交際することへの優越感/特権的意識はなかったのかという問いかけもしたくなってしまいます。

 アンドロイドの詩の朗読がキーポイントになり、また沁みる作品になっています。そこが気に入らない人には眠気を誘う作品ということになるでしょう。実際いびきをかいて寝てる人が周りにいましたし。
 ラスト近く、病が重くなりソファーに伏せるターニャが上半身裸で過ごすのは、病で咳き込んでいる姿と合わせ、とても不自然。ラストへの流れなのでしょうけれど、無理に裸を見せているという印象を持ちます。
 ターニャの父が見て感動したというエピソードからポイントの1つになっている竹の花ですが、赤いハンカチのような竹の花があるのでしょうか。私が知る限りでは、白っぽい稲の花に似たようなもので、赤いハンカチ状のものとは似ても似つかぬものと思うのですが…
(2015.11.29記)

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