◆たぶん週1エッセイ◆
映画「色即ぜねれいしょん」
いかにも70年代って感じをぷんぷんとさせた、中高年にはノスタルジックな青春映画
テーマとしてはもっと煩悩まみれのはずだが、主人公が純朴すぎてしかも高校生にしては物事がわかり過ぎ
1974年京都を舞台に不器用で初心な文系男子高校生の青春を描いた映画「色即ぜねれいしょん」を見てきました。
封切り3週目日曜日、7割くらいの入り。70年代ノスタルジーの中高年が多いかと思ったら、客層はけっこう若い。
仏教系男子高校に通う1年生の乾純(渡辺大知)は、高校の主流派の体育会系のヤンキーにもなれず、こっそり自宅でギターをかき鳴らし、小学校の同級生で今は別の高校に通う足立恭子(石橋杏奈)に片思いする日々を送っていた。ラジオのパーソナリティに相談の投書を送りその答えに従って恭子に「好きだ」と一言書いたはがき(!)を送り玉砕した純は、友人たちに「フリーセックスの島」と唆されて夏休みに3人で隠岐の島のユースホステルに旅行する。そこで知り合った女子大生オリーブ(臼田あさ美)と一夏のアバンチュールを試みるが・・・というお話。
ヒッピーの家庭教師(岸田繁)やロックカフェ、島のユースホステルとそのヘルパーの全共闘崩れのヒゲゴジラ(峯田和伸)とか、いかにも70年代って感じをぷんぷんとさせた、中高年にはノスタルジックな青春映画です。だいたい「ヒゲゴジラ」なんてあだ名からして「ハレンチ学園」でしょうし。設定が1974年に高1という、私と1つ違いの設定ですし、1978年から京都暮らしした関係で、個人的にはずいぶんとなつかしい思いをさせてもらいました。
ヒッピーの家庭教師に連れて行かれて酔いつぶれた純に「これ、よく効くぞ」って薬を出したり、突然自宅に訪れた女子大生と外食するという純に金を渡して「これで食事して彼女を送ったら帰ってこいよ」という父親(リリー・フランキー)、高1でハードケースに入れたモーリスのギターを持ち歩くなど恵まれた環境に育った純ですが、「恵まれた環境がコンプレックス」って、そんなこと意識できる高校生が今どきいるでしょうか。
京都に現れたオリーブの横に並んで、ノーブラでないのを見て、ここは隠岐の島とは違うって、彼女がいない童貞の高校生がそんな冷静なこと考えられるかなぁ。
ちょっと、そのあたり、純が純朴すぎてしかも高校生にしては物事がわかり過ぎって感じがしました。テーマとしてはもっと煩悩まみれのはずなんですが。
他方、隠岐の島から出るフェリーの船上や、京都の繁華街の人混みの中で、純を大声で「フリーセックスゥ〜〜」って呼ぶオリーブは面白すぎ。2人で繁華街(祇園っぽかったけど)を歩いているところを純と一緒に隠岐の島にいった友だち(森田直幸)に見つかって、「今日から付き合ってます」「これからやります」って宣言しちゃうところも、かなりぶっ飛んでます。
う〜〜ん、彼女がいない男子高校生がこの攻撃に耐えられるとは思えないんですが。京都在住なんだから、オリーブが「ラブホ行こう」って言いながら祇園(たぶん、それとも木屋町だったか)を歩き鴨川端までくるなら、祇園か岡崎にラブホがあることくらいわかってるでしょうし。
ただ、最初のシーンは、あれ詐欺じゃないでしょうか。最初にあれを見せられて回想に入ったら、当然どこかであそこに戻ってくるか、そこまで行き着かなくても最初のストーリーにつなげるところまでは、あると思うでしょ。いつになったらそこに行くのかと思ってたら、そこにつながらずにエンディング。これだったら、最初のシーンはカットして単純に時系列の進行でよかったんじゃないでしょうか。
(2009.8.30記)
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