◆たぶん週1エッセイ◆
映画「サイドウェイズ」
40代のさえない男2人がカリフォルニアを旅して青春の日々を思い返し人生を捉え直す1週間を描いた大人の青春映画「サイドウェイズ」を見てきました。
封切り1週目祝日、午前中からほぼ満員。客層は圧倒的に中年カップル(私も、そう)。
売れないシナリオライターの斉藤道雄(小日向文世)は、かつてはキャプテン・ニンジャのMrハットリを演じた俳優だがその後は売れず今はカリフォルニアのレストランの雇われ店長の上原大介(生瀬勝久)がオーナーの娘と結婚することになり、独身最後の1週間を一緒に旅行しようと誘われて、2人でカリフォルニアのワインの名産地ナパ・バレーを旅することになる。かつて高校生の時に道雄が家庭教師をしていて3人で連れ立って遊び歩いていた麻有子(鈴木京香)がナパ・バレーで働いていることを知った2人は、麻有子を訪ね、大介は麻有子の友人ミナ(菊池凛子)と意気投合して口説き落として半同棲状態になり、結婚をやめてミナと一緒に日本に帰国して店を持つなどといいだし、道雄はミナに励まされながら麻有子への思いを少しずつにじませていくが・・・というお話。
要領よく割り切って事を進める大介とミナと対照的に、不器用でじれったい道雄と麻有子が時にしみじみ・ほんわかと、時にすれ違いぶつかり、一進一退しながら進む恋の行方がメインストーリーとなり、道雄と麻有子の語るワインの蘊蓄がサイドストーリーという感じでしょうか。
私のような、恋愛には不器用な中年には、道雄と麻有子の好き合ってるってわかってるのにすれ違う様が、よくわかるし共感するけど、でもやっぱり切なくもじれったい。特に、麻有子の自宅に招かれ2人で食事をして、ソファーでキスまでして、日本支店行きは断った、私はアメリカでやって行きたいという麻有子が、ちょっとぶつかったのを気を取り直して、ニッコリ笑って飲み直しましょうと新たなワインを取りだしたところで、道雄が飲み過ぎたから今日は帰るってシーン。そこは帰らないでしょう、いくら何でも。いや、下心がなくても(ないわけないけど)、好きな女が、もっと別の話をして仲良くしようよって言ってるのに、背を向けますかぁ。
最後は、麻有子が、勤め先からの東京支店行きのオファーを飲んで道雄とともに日本で暮らすのか、アメリカでキャリアを積む道を選ぶのかという選択がクローズアップされます。結局、女は男に付いて来い(女がいつも I will follow you という)ってラストの持って行き方は、どうにも古典的。道雄が最後には、どこで暮らしたっていいじゃないかと言い出すのが、自分がアメリカに住むというチョイスも含んでとすると、そうでもないかもしれませんけど。
人生負け組の男が中年になり、20年前に恋したが実らなかった相手と再会して、恋を実らせる・・・中年男の憧れのドリーム・ストーリーなんでしょうね。そう思うとなんか面映ゆい。でも、アメリカで夢をつかみつつある女の方は(バツイチで日本から逃げ出した負い目はあるにせよ)、どうしてそのさえない人生負け組中年男を振り返ったのか、そこを追及するとなりたたないかなと思いますが、私には不思議。
そこを難しく考えずに素直に見られれば、中年男にはグッと来る青春(よもう一度)グラフィティといえるでしょう。
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