たぶん週1エッセイ◆
映画「スイートリトルライズ」
ここがポイント
 ジコチュウのストーカー男春夫と、超「重い女」三浦。主人公夫婦はどうしてこういう人たちに惹かれるのか不思議
 三浦に誘われての伊豆行きに瑠璃子を同行させた聡の心理は要検討

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 結婚3年目の寂しがり屋妻とゲームオタク夫にストーカー男と暴走女が絡むラブ・ストーリー映画「スイートリトルライズ」を見てきました。
 封切り2週目日曜日午前中、封切り2週目にして早くも1日1回上映に落とした新宿武蔵野館は5割くらいの入り。最短3週での打ち切りかも。

 結婚して3年のテディベア作家岩本瑠璃子(中谷美紀)とIT企業勤めの岩本聡(大森南朋)夫婦。喧嘩をすることはないがセックスレスで、話しかける妻に夫は生返事が多く、部屋に鍵を掛けてゲームに浸り用事があるときは携帯電話で呼び出さなければならない。傍目には理想的な夫婦で、不幸というわけでもないのだけれども、寂しく思う妻は「この家には恋が足りないと思うの」と語り、ジャガイモの芽を集めて佃煮にして夫に食べさせようと妄想する。そんなある日、瑠璃子の個展を訪れて非売品のテディベアを自分の恋人のために譲って欲しいとごねる青年春夫(小林十市)と近くのレンタルビデオ屋で再会した瑠璃子は、春夫に誘われてたちまちのうちに不倫の関係を持ち、恋をしてしまう。他方、大学のダイビングサークルのOB会に顔を出した聡は、後輩の三浦(池脇千鶴)から積極的にアプローチされて、やはり不倫の関係に。瑠璃子と聡の夫婦の行方は・・・というお話。

 部屋に鍵を掛けてこもり大音響でゲームを続け、携帯電話で呼ばれないとドアを開けない夫聡。やさしげではあるものの、妻との会話はいつもちぐはぐだし、反応遅くて、仕事できなさそう。それでも見限らない妻と、必死のアタックを続ける三浦。そういうものかなぁ。
 公式サイトのストーリーなんかでは、恋人のために非売品のテディベアを譲ってくれと直談判する春夫を「実直」と書いていますが、強引で粘着質なだけと感じます。自分は恋人美也子(安藤サクラ)との関係も続けながら、夫と伊豆に行くという瑠璃子に対して他の男と旅行に行くことが許せないと言い放ち、伊豆の砂浜で本を読む瑠璃子を2時間かけて捜し出して追いすがるジコチュウぶりと執着心はストーカーそのもの。挙げ句の果てに、夫と会いたいと、事情を知らない聡と美也子を呼んで4人で会食しようと言い出します。間男にはせめて一定の良心の呵責を持って欲しいものですが、ここまでの思い上がりと厚顔無恥ぶりを見せられると呆れるしかありません。そしてこういう低劣な人格の男にどうして瑠璃子が恋することができるのか、私にはとても理解できません。それを受け容れて春夫を夫と会わせまた自分も美也子と会う瑠璃子の神経も疑います。
 聡に激しくアタックする三浦の「重い女」ぶりもすごい。アポなしで老舗の弁当片手に会社を訪れ公園でランチしながら、自分は水曜日が休みだからこれから毎週水曜日一緒にランチしませんかって。その次は急にディナーに誘い、実はこのレストラン、普通は1か月待ちなんですって。さらにそのレストランで、今度伊豆にダイビングしに行きませんか、2人でって。で、伊豆では予想通りお部屋も用意してあるし。怒濤の寄り、がぶり寄りです。1か月前から黙って予約してたとか、いきなり2人で旅行のお誘いって、言われたら引くよね、ふつう。水族館の飼育係の三浦が、一度来て欲しいというので聡が行くと、いきなり聡の腕を取り、おい職場だろとためらう聡に、水族館はカップルが多いからこの方が目立たないんですって。そりゃ普通の格好してりゃそうかもしれないけど、飼育係のユニフォーム着てるだけで思い切り目立ってるし。ただ、三浦の場合は、自分は独身だし二股かけてないんで、一途さが空回りしてるだけで、ある種けなげとも言えるし、住宅街のラブホから歩き去る姿はちょっと同情しましたけど。

 こういうちょっとなぁって人たちの話だけに入りにくいところもありましたが、夫婦・愛人の人間関係には考えさせられます。
 聡と三浦の伊豆行きに、瑠璃子が同行して、聡と瑠璃子が伊豆まで行って瑠璃子を砂浜において聡がダイビングに行って三浦と合流というのをどう読むか。公式サイトでは「大胆にも瑠璃子と一緒に出かける聡」とあります。私は、聡の性格設定からして、妻とも三浦ともとかスリルを味わうとかいう発想ではなくて、三浦と2人だけで行ったらもう先は見えるというかあまりに露骨な三浦への牽制、少なくとも自分の気持ちの中での歯止めとして妻を連れて行ったんじゃないかと思いましたが。

 テディベアの制作途中、特に目を縫いつけるところって、ちょっと怖い。ぬいぐるみを作る以上当然ですが、目のあるべきところに針を深々と差し込んでいく作業は、映像で見るとやはり不気味。その作業をしている時の瑠璃子の目つきも怖いものがありましたけど。

【追記】
 原作では、聡と三浦は大学のスキー部の先輩後輩(三浦が3年後輩)ですが、映画ではダイビングサークルになっています。中谷美紀か大森南朋か池脇千鶴の誰かが「スキーは無理!」だったのか、撮影スケジュールが夏限定だったのか…
 原作では、聡が瑠璃子と行く春スキーでこっそり三浦とも会うことを約束していたとき、三浦が同じロッジに部屋を取っていることは最初からのお約束ですが、映画では三浦がこっそりご休憩用の部屋を予約していたことになっています。三浦の積極性は同じですが、映画の方が聡のためらいを少し強めています。好みの問題ですが、私は映画の聡の方が共感できそう。

(2010.3.21記、原作を読んで2013.10.3追記)

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