◆たぶん週1エッセイ◆
映画「天才スピヴェット」
スピヴェット少年の家族への思いがメインテーマ、お子様冒険ものと見た方がいい
スピヴェット少年のスピーチのシーンがクライマックスで、その後の大人の思惑は冗長
山間の牧場に住む天才少年の家族への思いを描いたハートウォーミングコメディ「天才スピヴェット」を見てきました。
封切り2週目日曜日、ヒューマントラストシネマ渋谷シアター1(200席)午前10時の上映は3〜4割の入りだったと思う。5週間半前なので、記憶がかなり薄れてますけど:今頃それを書く私って…
アメリカ北西部の山間の牧場に住む10才の天才少年スピヴェット(カイル・キャレット)は、カウボーイのアイデンティティを追求する父テカムセ(カラム・キース・レニー)と昆虫学者の母クレア(ヘレナ・ボナム=カーター)、アイドルを目指す姉グレーシー(ニーアム・ヲルソン)、そして双子の弟レイトン(ジェイコブ・デイヴィーズ)に囲まれて育った。スピヴェットは、射撃や投げ縄が得意なレイトンと仲良くはしゃぎ回っていたが、父親が自分の生き方を託してレイトンをかわいがることに寂しさを感じていた。そんなある日、レイトンが銃の事故で死に、家族の心にぽっかりと穴が開いてしまう。その後、スピヴェットが発明した蒸気車輪(永久機関)がスミソニアン博物館から賞に選ばれたと連絡が入り、スピヴェットは連絡してきた次長のジブセン(ジュディ・デイヴィス)に大人のふりをして受賞式への出席を承諾する。母親が調査旅行に誘うのを振り切り、早朝牧場へ出かける父親の目を盗んで、母の日記や思い出の品を詰めたスーツケースを手にスピヴェットは貨物列車に忍び込み、授賞式会場への長旅に出るが…というお話。
予告編を見た時には、スピヴェット少年の天才ぶりがテーマというか、そちらでストーリーを展開させるのかと思いましたが、発明品は、やや陳腐な感じで、原理や仕組みについての説明もほとんどなく、発明の過程や努力・工夫などもほとんど描かれていません。
スピヴェット少年の家族への思い、自身も大好きだった弟への思いと、弟が家族に愛されているのに比較して自身への愛の欠乏感を持つ鬱屈した感情、弟がいなくなった今自分が代わりになれず家族が悲しみを乗り越えられないことを哀しく思う気持ちなどがメインテーマで、ストーリーはその気持ちを抱え反芻する旅情と小さな冒険で展開する形です。少年の無邪気さ、愛らしさで見せるお子様冒険ものと見た方がいいだろうと思います。原題は " L'extravagant voyage du jeune et prodigieux T.S. Spivet "(若くて非凡なT.S.スピヴェットの途方もない旅)。原題だと、作品のイメージがそれなりに想起できます。
予告編でも見せるスピヴェット少年のスピーチのシーンがクライマックスで、その後、スピヴェット少年を巡りマスコミに売り出そうとするジブセンやトークショーの司会者ら大人の思惑とクレアの対立などは、中途半端な感じで冗長に思えました。むしろ、スピーチのシーンで、それを見守るクレアをアップにして、そこからラストのエピソードを1つ2つ展開して終わった方がすっきりしてよかったんじゃないかと思います。
日本語タイトルに囚われず、少年の家族への思い、鬱屈した感情と、主演男優の表情やしぐさのかわいさを味わうべき作品だと思います。
(2014.12.31記)
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