◆たぶん週1エッセイ◆
映画「砂上の法廷」
観客は騙され続け、「衝撃のラスト11分」ではあろうが、この騙され方は後味が悪い
ナイフで心臓を一刺しの事件で、正当防衛を主張されて追及しない検察官って…
キアヌ・リーブス主演のリーガル・サスペンス映画「砂上の法廷」を見てきました。
封切り3日目日曜日、全国で11館東京では唯一の上映館TOHOシネマズシャンテスクリーン2(201席)午前10時20分の上映は8割くらいの入り。
大物弁護士ブーン・ラシター(ジム・ベルーシ)が自宅の寝室で殺害され、17歳の息子マイク(ガブリエル・バッソ)が逮捕されて起訴され、ブーンの妻でありマイクの母であるロレッタ(レニー・ゼルウィガー)からマイクの弁護を依頼されたラムゼイ(キアヌ・リーブス)は、マイクがひと言も話してくれないまま、公判期日を迎えた。検察側証人が、マイクがある時期からブーンと対立していたこと、凶器のナイフにはマイクの指紋がついており駆けつけた警察官の前でマイクが自白したことなどを次々と証言し、ラムゼイは手探りで反対尋問をするが、状勢は誰の目にも検察側の圧倒的優位に推移していく。サポートを依頼された「嘘発見器」のあだ名を持つ休職明けの弁護士ジャネル(ググ・ンバータ=ロー)は、検察側証人が次々と嘘を言っていることを見抜くが、打つ手はない。ラムゼイは、モハメド・アリとジョージ・フォアマンの対戦を引き合いに出し、あまりに一方的な展開だと陪審は負けている方に同情すると言い、今はまだ負け続けるんだとうそぶくが…というお話。
公式サイトのキャッチ、予告編のラストが「94分、あなたは騙され続ける。」。確かに騙されましたが、しかし、この騙され方は、後味が悪い。公式サイトで、タイトルと同じ大きさで、「この結末、他言無用。」と書かれていますので、具体的には言いませんが。
法廷シーンは、いたずらに派手にしないで、異議も、関連性なし、探索的尋問(根拠なし)などの日本の裁判でも異議を言いたくなるような場面に限定されています。ただ、検察側の主尋問が、主要なポイントまで含めてほとんどが誘導尋問(Yes、Noで答えられる質問)なのは、尋問として素人くさいし、弁護側から異議が出るか裁判官から注意されそうに思えました。
弁護側の正当防衛(緊急行為)の主張に対して、検察側が、凶器のナイフはどこにあったのか、ナイフを事前に用意していたのか、それはなぜか、危機的状況にありながら心臓を一刺しというのは不自然ではないか等の質問・指摘をすることもなくあっさり引くのも疑問に思えました。
予期せぬ展開が、結局は功を奏する形になったのですが、当初の予想通りに展開した場合に、ラムゼイがどうするつもりだったのか、プロとしてどういう読みだったのか、同業者として、気になるところです。
(2016.3.27記)
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