◆たぶん週1エッセイ◆
映画「インフォーマント!」
内部告発者も企業もFBIもそれぞれに汚点を残して終わるが、全体の印象としては、内部告発者は英雄ではなく内部告発してもいいことはないという、内部告発を押しとどめる方向の、つまり企業側の味方のつくりと感じる
企業幹部による内部告発を描いた映画「インフォーマント!」を見てきました。
封切り3週目祝日午前中、新宿ミラノ1は1割程度の入り。224席のシネマスクエア東急で封切られたのが、封切り3週目になって定員1064名のミラノ1に回ったのを見て、え〜っと思って見に行ったのですが、やっぱり不入りでした。
アメリカの大手化学会社ADMのコーンからリジンを製造する部門の責任者マーク・ウィテカー(マッド・デイモン)は、リジン工場がウィルスにやられて製造が滞ったところに「味の素のナカワラ」からウィルスは味の素のスパイが仕組んだ、その人物の情報と耐性株を渡すから金をよこせという電話が来たと役員に知らせたことから自宅の電話回線に盗聴器を仕掛けに来たFBI係官に、妻の勧めで自分が関与してきたリジンの製造量と価格についての国際カルテルについて内部告発する。決定的証拠を求める司法省とFBIの要請に従って2年あまりの間カルテルの謀議の録音やビデオ撮りに協力したマークは、強制捜査が始まっても自分は訴追されないばかりか自分は正義に従ったのだから非難されずADMの社長になれると信じ込んでいたが、実際に捜査が始まると、FBIは証人を守ってくれず、会社経営者側からは架空会社を経由しての巨額のリベートの受け取りを暴露され、横領疑惑でマスコミに追い回され訴追され・・・というお話。
どうにもわかりにくく、スッキリしない映画です。
内部告発者のマークは、自らが正義と確信し、カルテルの告発に関しては正義なのですが、しかし内部告発後に自らが会社の社長になれると考え、しかも自分は巨額の横領を犯していながらさしたる罪悪感もないという非常識で独善的な人物と描かれています。
同時に会社の方も、マークの横領があってもカルテルを続けていた事実は消えません。
また、FBI・司法省も、犯罪を立件するために内部告発者をトコトンまで利用しつつ、保護することもなく冷たく切り捨てています。
このように、内部告発者も、企業も、FBIもそれぞれに汚点を残して終わるのですが、それでも全体の印象としては、内部告発者は英雄ではなく内部告発してもいいことはないという、内部告発を押しとどめる方向の、つまり企業側の味方のつくりと感じました。
随所で、グリシャムの、映画としてはトム・クルーズの、「法律事務所(The Firm)」に言及しています。「法律事務所」のミッチのようにうまく内部告発をしつつFBIを出し抜いて巨額の金をせしめることに憧れて行動したけど、やりそこねたというところでしょう。マークの場合、告発前から告発とは関係なく長年にわたってリベートを取ってきたのは、「法律事務所」のミッチよりずいぶん共感を得にくいとは思いますが。
(2009.12.23記)
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