たぶん週1エッセイ◆
映画「ヴィヨンの妻」

 生誕100年の太宰治作品の映画化「ヴィヨンの妻」を見てきました。
 封切り2週目日曜日午前中の入りは2〜3割というところ。
 「さまよう刃」に続き、2009年10月18日日曜日に見ましたが、その日も映画を見た後事務所に直行して夜まで仕事・・・その後も仕事に追われて、ようやく今頃書いています。

 気まぐれで女たらしで放蕩者の作家大谷(浅野忠信)の妻佐知(松たか子)が、夫が長年ツケをため続けた挙げ句に仕入れ代金を奪って逃げて作った借金を返すために居酒屋で働き、酔客の間で人気が出て言い寄られながらも夫を愛し続けるという話で、どうしてこういうわがままな夫に尽くしていられるのってテーマの映画ではあります。

 気丈で明るく堅実な松たか子、最初から最後まで松たか子の作品です。
 と同時に、松たか子に恋する男たちの、恋する男って端から見たら情けない・見苦しいよねって姿を、いやというほど見せつけられる作品でもあります。
 松たか子に惚れた若い旋盤工の岡田(妻夫木聡)は、自分は腕がいいから暮らしには苦労させないなどとプロポーズしながら(だいたい、夫が寝ている部屋の外で、プロポーズするか?)、松たか子を抱きしめた場面を大谷に見られたと知るや、逃げ去って二度と現れない。器を超えた見栄を張るけど、本当は度胸のない未熟なやつ。
 大谷は、自分はさんざん他の女と不貞の限りを尽くし、椿屋の女房も寝取っておきながら、自分がコキュ(寝取られ男)になることばかり恐れて、松たか子を尾行したり岡田を尾行したりします。なんか見てていやになるほどねちっこく、情けない。
 そして、松たか子の昔の恋人の辻(堤真一)。弁護士になり、銀行の頭取の娘と見合いしながら、そのことをわざわざ松たか子の勤める店にやってきて伝えるこの未練がましさ。夫が心中未遂事件で警察に留置されたのを弁護を依頼されて「僕の弁護料は高いよ」って言って、夫の釈放後に事務所を訪れた松たか子に、頭取の娘っていっても進駐軍と遊び歩いたすれっからしをつかまされたとぼやき、君が欲しいと言い募る見苦しさ。だいたい意に沿わないなら見合いなんかしなけりゃいいし、結婚すると決めたなら今さら文句言うなよって思う。その上、この人、かつてこいつのために松たか子がマフラーを万引きして警察に捕まったのを見ながら警察署の前から黙って逃げ去ったという引け目というか、借りがあったわけで、それだったら、弁護料は過去のことを君が許してくれるのならそれで十分だくらい言えよって思います。それをまぁ・・・同業者ということで見方が厳しくなってるかもしれませんが、私には、これが一番情けなかった。

 松たか子と愛人秋子(広末涼子)との女の確執も、少しは描かれていますが、前宣伝の印象とは違って、そこはほんの少し。どうでもいいけど、ヒロスエってベッドシーン役の印象が強くなってきているような・・・「ゼロの焦点」はそうでないといいけど。

**_****_**

 たぶん週1エッセイに戻る

トップページに戻る  サイトマップ