庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「ワールド・ウォーZ」
 ぶらぴさま主演のゾンビ映画「ワールド・ウォーZ」を見てきました。
 封切り2週目土曜日、新宿ミラノ2(588席)正午の上映は2割くらいの入り。

 国連を退職した調査員ジェリー(ブラッド・ピット)は家族とともに渋滞に巻き込まれていたが、目の前で何者かに噛まれた人間が12秒でゾンビ(アンデッド)として周囲の人間に襲いかかり始めるのを見て逃走する。国連事務次長ティエリー(ファナ・モコエナ)から夜明けに助けに行くと言われ、近くのアパートに飛び込んで、アンデッドの追撃を振り払いながらアパートの屋上からヘリで救出され、大西洋上の空母に搬送されたジェリーは、謎の感染症が爆発的に広がり今ではほとんどの都市がアンデッドに席巻されていると知らされ、感染症学者とともに感染源の特定の調査を命じられる。家族とともにいたいと断るジェリーに対して、ティエリーは任務に就かないのならこの船にいる資格はないと通告され、12日前にゾンビにやられたというメールを送ってきた在韓米軍基地に向かう。給油のために降りたところで、ジェリーらはアンデッドに襲われ、混乱の中で感染症学者は誤射されて死んでしまい…というお話。

 私は基本的にゾンビ映画は苦手です。ホラー全般が好きではないですが、そのレベルを超えて、人間を平気で大量殺戮する言い訳をするのに、かつては「鬼畜米英」とか「劣等民族」などとレッテル貼りして虐殺してもかまわないと言っていたのを、さすがに今ではそうは言えないので、相手は人間ではない、ゾンビだと言っているように思えます。ミラ・ジョヴォヴィッチが主役でもあまり見たくないのに、ましてや中年のおっさんの映画なんて…
 タイトルの「ワールド・ウォーZ」の「Z」を公式サイトのイントロダクションでは「最期」とふっていますが、原作本のタイトル World War Z : An Oral History of the Zombie War からしても、Zはゾンビの意味。それなら予告編や番宣でもっとはっきりゾンビ映画だと明示して欲しい。そうすれば、「ジャッキー・コーガン」でブラピ主演作品ということに見る価値をもはや見出せないことを十分に頭に刻み込んでいたのだし、ましてやゾンビ映画なら絶対見ないという選択だったのに。

 ただ、この作品の結論部分が、全面的な解決は簡単ではないことを示し、ブラピが見つけた限りの解決策は客観的には「共存」を意味していることは、野蛮なゾンビ殺戮映画から少しは抜け出しているところがあり、よかったと思います。

 アンデッドに対してイスラエルはいち早く高い壁を張り巡らせて防備し、賢明さが強調されています。その賢明になれたわけは、イスラエルは騙され続けてきたからだということで、中東戦争も例に挙げてアラブから騙されたとも明示しています。その上で、ムスリムを含む難民も受け入れ、寛容で良心的な存在と描かれています。さぞかし中東ではイスラエルが終始被害者で、それにもかかわらず寛容な行動をとり続け、イスラエルに正義があるのでしょうね。ハリウッドがユダヤロビーに支配されているということを、いくら何でもここまでやる?という思いとともに再認識しました。

 ブラピが旅客機の中でアンデッドに襲われて手榴弾を投げて旅客機に穴が開き、旅客機は不時着、乗客乗員のほとんどが死亡というシーン。旅客機の破片・残骸の中でブラピとイスラエル軍人セガン(ダニエラ・ケルテス)が生き延び、何人かのアンデッドらしきものが呻いています。日本の観客には、少なくとも私には、日航ジャンボ機墜落をイメージさせるこのシーンを含む映画を、遺族が毎年灯籠流しをする8月11日・慰霊登山をする8月12日を直近に控えた8月10日に公開するかなぁ。日米同時公開だったら日本の興行サイドであまりずらせないかもしれませんけど、アメリカ公開は2013年6月21日。日本での公開をわざわざこの週にする必然性はないはずですが。

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