◆たぶん週1エッセイ◆
映画「妖怪の孫」
特に違和感のない安倍政権の批判的総括だが、内容よりも最後に監督が娘の将来を思い声を詰まらせたことの方が印象的
わかりやすく危険だった安倍晋三よりも、そう見えないのに安倍政権でもできなかったことをやる現政権の方が恐ろしいと思う
安倍晋三とその政権について批判的な立場から総括したドキュメンタリー映画「妖怪の孫」を見てきました。
公開3週目日曜日、新宿ピカデリーシアター4(127席)午前11時5分の上映は、ほぼ満席。
献花に訪れる人の列と国葬反対デモ、それに対してハンドマイクで罵る人々の映像で、安倍晋三と安倍政権がもたらした分断と対立を象徴的に示し、安倍晋三の選挙強さとメディア戦略、メディアの弱腰と忖度をITコンサルタントとニューヨークタイムズ記者を通じて語らせ、アベノミクスの実像を1人あたりGDPの凋落や業界ごとの自民党献金額と減税額などとてもわかりやすいデータに基づいて元通産官僚古賀茂明に語らせ、森友・加計疑惑の封じ込めや集団的自衛権容認への解釈変更を官僚人事の掌握により強行した恐怖支配を匿名の霞が関官僚に語らせ、地元での関係企業(安倍晋三がかつて勤務した神戸製鋼や兄の勤務先企業など)の優遇・癒着を反対派区議に語らせ、安倍晋三の生い立ちやオフレコ発言(本音)を長く安倍晋三を取材し続けた記者に語らせ、暴力団関係者を利用したが約束した報酬を払わなかったために火焔瓶を投げられた疑惑をそれを取材したがメディアに無視され握りつぶされたフリージャーナリストに語らせ、統一教会との関係をやはり取材し続けたフリージャーナリストに語らせ、といった具合に、わかりやすく要領よく取りまとめています。
安倍政権に批判的な立場からは、「そうだ、そうだ」と思うか、「まぁそうだよね」と思うかという内容です。
私には、全然違和感はないですが、他方で特に目新しいことがあるわけでもなく、「まぁそうだよね」と思いました。
安倍晋三のようなわかりやすく危険な人物が去った後、ホッとしていたら、元々はもっと常識的な人のはずだった岸田文雄が、安倍政権でもやれなかったようなことでも平然と進めている昨今、妖怪の影と残像を思い起こすよりも、もっと恐ろしい現在の存在を直視することの方が必要なのだと思います。
映画の本筋・内容は、まったく違和感はない反面、ある意味でさほど新鮮味はなく、淡々と見ていましたが、最後に監督が幼い娘の写真を示し(大丈夫か?と思いますけど…)娘はまだこれから生きていくのに、こんな国を残していいのかと声を詰まらせたのが印象的でした。エンドロールの異様なまでの短さも(登場した人、関係した人の名前、出したくないんでしょうね)。
(2023.4.2記)
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