庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

たぶん週1エッセイ◆
映画「何者」
ここがポイント
 就活の過酷さ、就活生のストレス、心のゆがみ、目の前の相手に向き合えずにSNSに没頭する現代人の姿などがテーマ
 拓人の瑞月に思いを伝えられないもどかしさ、喧嘩別れしたギンジへの複雑な思いが心情的には見せ場

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 朝井リョウの直木賞受賞作を映画化した「何者」を見てきました。
 封切2日目日曜日、新宿ピカデリースクリーン6(232席)午前10時35分の上映は9割くらいの入り。

 演劇サークルで脚本を書いていたがタッグを組んでいた演出家烏丸ギンジが独立して別の劇団を作り喧嘩別れになって自分は引退した二宮拓人(佐藤健)は、ルームシェアしている学生バンド「オーバーミュージック」のヴォーカル神谷光太郎(菅田将暉)、拓人が思いを寄せるが光太郎に心を奪われている同級生の田名部瑞月(有村架純)、瑞月が留学生交流会で知り合った小早川理香(二階堂ふみ)とともに就職活動を始める。4人と理香の同棲相手の宮本隆良(岡田将生)は、一堂に会してエントリーシートを書く練習や情報交換をしながら、同時進行で黙ってその状況をツィートしたり、志望先を隠して面接に出かけてばったり出会って驚いたりと、微妙な心のとげを抱えながらそれぞれの就活を進めていた。拓人は、バイト先の先輩沢渡(山田孝之)から、ギンジを隆良と同じとまとめて切り捨てるのは間違いだと指摘され、田舎の家を飛び出してきた母を抱えて大企業に就職することを優先してエリア職で通信会社の内定を得た瑞月は、ギンジとのコラボを中止した言い訳にギンジをけなす隆良を批判して10%でも20%でも自分の中から出さなきゃ始まらないと声を荒げ…というお話。

 就活の過酷さ(というか、だいたいなんだって、消費者の立場からしたらどうということもない企業の面接官にそこまで媚びなきゃならないのか、心を折られなきゃいけないのか…私がそう思うのは自分が就活した経験がないから、なんでしょうけど)と、それに押しつぶされる就活生のストレス、心のゆがみ、目の前にいる相手と向き合えずSNS等での発信(虚像・取り繕い)に没頭する現代人の姿というあたりがテーマになっています。
 心情的には、一貫して瑞月に思いを寄せながら、瑞月が光太郎と付き合い振られながらまだ光太郎を思っているゆえに、瑞月に思いを伝えられない拓人の切なさ、歯がゆさに心を揺さぶられ、喧嘩別れの形になったギンジへのねじくれた気持ちと意地でも認めたくない別離への後悔を哀しく思う、そういう作品だと思います。

 ほぼ原作通りの展開で、原作にないシーンはラスト前の拓人と瑞月の会話、拓人のツィートを演劇化した見せ方くらい、原作から落とされたシーンで展開に影響しそうなものは最初のライブのシーンで拓人がジンバックをこぼして瑞月がハンカチを差し出すシーン(原作ではここで拓人がスーツ姿という言及はありません)と瑞月が留学先から拓人に電話するシーンくらいでしょうか。
(2016.10.16記)

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