◆活動報告◆
オウム犯罪被害者給付金申請の実情
2008年12月18日、「オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律」が施行され、地下鉄サリン事件遺族の高橋シズヱさんと被害者2名とともに警視庁に申請に行ってきました。 実際の申請に立ち会ってみて、わかったことを説明しておきます。
申請の前に、警察の担当者と電話で話をすることになります。この段階で、本人確認、被害の程度等の申請に必要な事実関係は、現実には確認されてしまいます。この法律の施行前の段階で、被害者の負担を軽くするという配慮から、刑事事件の起訴状に記載された被害者のデータ、破産手続で債権届出をした被害者のデータ、労災申請や犯罪被害者給付金の支給申請をした被害者のデータが警察庁に提供されました。警察庁はそれをデータベース化して各都道府県警察に提供しています。その結果、遺族・被害者が警察の担当者に電話した段階で、警察の担当者は、コンピュータの端末でそのデータを見ながら、電話をしてきているのが誰か、被害者本人か、その被害者のこれまでの手続で認定された被害の程度などの情報を確認していくことになります。
都道府県警察の側で、そのような情報をすでに持っていることをきちんと説明するとは限らず、しかも警察の担当者の方で被害の程度について断言してしまうことがあり、電話をした被害者が何故申請前に警察側で被害の程度について断定するのかと不満を持つケースも報告されています。被害者の側では、破産手続などでの届出後にもさらに通院していて被害の程度が重くなっているケースもありますので、警察側で事前のデータを当然の前提としてしまうことには問題があり、十分な配慮を求めたいところです。
遺族・被害者の申請する被害の程度が警察側が持っているデータと同程度である場合は、申請の日は、本人確認のための書類(運転免許証など)と印鑑があれば足りるケースが大半となります。この場合、申請も簡単な意思確認と書類の記入だけで、私が現実に立ち会ったケースでも意思確認や世間話も含めて20分足らずで終わりました。
被害の程度について、警察側が持っているデータよりも重いランクの主張をする場合は、その被害の程度に関する書類等を持ってくることが求められ、申請は原則として都道府県警察本部(最寄りの警察署ではありません)となり、警察側としては面談してお話を聞いた上で、調査をするということになり、その場では申請書は書かず、後日再度出向くという扱いになります。この場合、警察側で担当医への聞き取り等を行って検討するということになるそうです。
現実的には、申請で悩ましいのは、事件後も長く通院し、場合によっては今でも通院しているけれども、担当医がサリンによる後遺症であるという診断書や意見書を書いてくれないという場合です。実は、私が立ち会った被害者の方もそういうケースでした。本来的には、私たちは以前から警察や厚労省に地下鉄サリン事件と松本サリン事件の被害者の追跡調査を求めてきました。しかし、現実には政府による追跡調査は行われていません。この追跡調査がきちんと行われていれば、その分析によって、サリン中毒による後遺症の研究や疫学調査が進み、サリン事件との因果関係を究明できたと思われます。原爆症などではそういうことが行われてきたのですから。私たちとしては、政府がそういう調査を怠ったために医師がサリン中毒の前例がないことを理由にサリン中毒による後遺症という診断を出すことを躊躇せざるを得ない事態を招いたということに十分な配慮を求めたいと思っています。本日もそのようなことを警視庁の担当者にお話しして、少なくとも、今後申請期間内に事情が変わり医師の意見が変わった場合には再申請ができるということについては確認させていただきました。
給付金を支給するという裁定は、被害の程度について警察側が持っているデータと同程度の申請については、1〜2ヵ月程度で出したいということでした。
裁定(給付金の支給の決定)が出ると、裁定書が申請者のところに郵送され、その際に支払請求書が同封されるということです。その支払請求書に振込先口座等の所定の事項を記入して署名押印して返送すると、指定した口座に給付金が支払われることになります。
ですから、多くのケースは、申請者が警察に行くのは申請の際の1回だけで済みます。また遺族や重傷者については、警察の方で訪問して申請してもらう予定だそうです。
ただ、先に説明しましたように、申請する被害の程度が警察側が持っているデータより重いランクの場合は、調査等で時間がかかり、また警察に何度か行くことになりそうです。
少なくとも、刑事事件の起訴状に記載されているとか破産手続で債権届出しているなどして警察側が把握している被害者で、被害の程度が警察側が持っているデータ通りの申請の場合は、申請自体は難しい点はなく、短時間で済ませることができます。
地下鉄サリン事件・松本サリン事件の遺族・被害者の方は、当然の権利ですから、申請の手続をとってください。
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