◆活動報告◆
地下鉄サリン事件から12年の集い
2007年3月17日、笹川記念会館会議室で開かれた地下鉄サリン事件から12年の集いで発表された地下鉄サリン事件被害者の会の声明は以下の通りです。
オウム被害者救済のための法律を!
1995年3月20日、地下鉄サリン事件が発生し、12人が死亡、5500人以上が受傷した。
オウム真理教は、目黒公証役場の事務長であった假谷さんの逮捕監禁事件を被疑事実として、22日から警察の強制捜査があることを見越し、捜査を攪乱する目的で、霞ヶ関を中心とする首都東京の地下鉄にサリンをまくという空前のテロ事件を引き起こした。
地下鉄サリン事件は、本日発表された手記集「私にとっての地下鉄サリン事件」のとおり、全国民を震撼させた前代未聞のテロ事件であった。強制捜査以降、それまでの坂本弁護士一家殺害事件、松本サリン事件など数々の凶悪事件が、オウム真理教の主宰者松本智津夫死刑囚とその信者らの犯行であることが判明した。
被害者は、十分な被害回復も図られないまま、いま満12年が経過しようとしている。現在、東京地方裁判所において、オウム真理教の破産手続が進行中であるが、被害者への配当を34%まで引き上げた管財人のご尽力は、管財業務としては異例の11年という長期に亘るものであり限界に達している。 もとより犯罪被害者に対する国の補償はなく、テロ事件である地下鉄サリン事件の被害者ですら例外ではない。米国における9.11テロ事件の被害者に対する補償(1遺族あたり平均およそ金1億9000万円)、2005年のイギリスにおけるロンドン爆破テロの被害者に対する援助など、テロ対策の迅速で手厚い被害者救済の観点から、日本の無施策はお粗末と言わざるを得ない。
他方、アーレフと、そこから分裂した上祐派の団体も、実質オウム真理教であり、全国30か所の拠点に信者1650人を抱え活発に活動している。かつてテロ事件を起こしたオウム真理教が、なぜ現在でも活発に活動を続けているのか、全く理解に苦しむところである。
オウム真理教は、被害者への損害賠償責任があることを理由に、自らの存続を公言してきたが、団体の保身と安泰を図る魂胆に被害者は憤りを禁じ得ず、12年経っても平穏な生活とは程遠い。
地下鉄サリン事件の被害者は、国がオウム被害者に対し損害金を立て替え払いして、その立替金をオウム真理教に厳しく求償請求することを望んでいる。
国による被害者への損害金立替制度は、テロ事件の被害者を迅速に救済することができること、テロ組織から経済力を奪い壊滅へ追い込むことができること、という二つの利点を有する。
対外的にも日本のテロ対策を顕示できるよう、まずオウム真理教による事件の被害者に対する国の損害金立替制度を直ちに創設していただきたい(オウム真理教による犯罪被害者の救済のための特別措置法要綱(案)参照)。
また、地下鉄サリン事件の被害者だけでなく、広くテロ犯罪の被害者を支援し補償する法律の制定も強く望まれる(テロ犯罪被害者の支援と補償に関する法律(案)骨子参照)。
以上をもって、地下鉄サリン事件被害の会の声明とする。
2007年3月17日
地下鉄サリン事件被害者の会
オウム真理教による犯罪被害者の救済のための特例法要綱(案)
1.目的
この法律は、犯罪被害者等基本法の精神に基づき、オウム真理教関係者による犯罪の身体的被害者が、犯罪摘発後10年以上経過しているにもかかわらず、十分な被害救済を受けていないことに鑑み、国がオウム真理教等に代わって、損害賠償金残金を立て替えて支払うことを定め、もって、オウム真理教による犯罪の被害者の被害回復及び社会復帰を速やかに実現することを目的とする。
2.オウム真理教による犯罪被害者の損害賠償債権
オウム真理教による犯罪被害者の損害賠償債権とは、オウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律(平成10年4月24日法律第45号)第2条に定める「生命又は身体を害されたことによる損害賠償債権」をいうこととする。
3.国の施策
本法律成立施行日において、東京地方裁判所平成7年(フ)第3694号、第3714号破産申立事件(以下、「オウム真理教破産事件」という)についての、オウム真理教による犯罪被害者の損害賠償債権のうち未配当の残額を、国は各債権者に対して、立て替えて支払うものとする。
4.支払事務
全行の支払事務については、、オウム真理教破産事件の破産管財人が事務を取り扱うものとする。
5.求償権の取得
国は、第3項の支払を行うことにより、オウム真理教破産事件の破産財団が有するすべての債権につき、支払金額を限度として、債権譲渡を受けるものとし、譲渡を受けた債権の行使を行うことができるものとする。
テロ犯罪被害者の支援と補償に関する法律(案)骨子
1.目的
この法律は、国ないし社会を敵視して行われたテロ行為による被害が、国ないし社会に代わって受けたものであることに鑑み、国及び社会全体で早期の支援と十分な補償を行い、もって、テロ犯罪被害者の被害回復及び社会復帰を速やかに実現することを目的とする。
2.テロ犯罪事件の指定
内閣総理大臣は、犯罪の発生状況、前後の事情、被害の規模、その他の事情から、テロ行為による犯罪と推定される犯罪事件について、指定テロ犯罪事件を指定するものとする。
3.指定テロ犯罪事件被害者に対する早期支援の実施の責務
国は、指定テロ犯罪事件による生命、身体等の被害を受けた被害者(以下、テロ被害者という)に対して、可能な限り早期に支援を実施し、十分な補償を行う責務を有する。
4.支援の内容
前条に定める支援とは、生活、医療、カウンセリング、資金その他市民の生活に関する全般にわたるものとし、具体的な支援作業及びその統括を公私の団体(以下、指定団体という)に委託できるものとする。
5.指定テロ犯罪被害者支援基金
被害者の支援と補償を行うため、内閣総理大臣は、第2条の指定が行われた後、速やかに、指定テロ犯罪支援基金(以下、基金という)を設立する。国は、この基金に対して、設立時及びその後必要性に応じ、十分な資金を提供しなければならない。
6.支援の体制
内閣総理大臣は、基金を設立したとき、速やかに、地方公共団体、国民及び公私の団体に対して、支援に対する協力及び支援活動資金の提供を呼びかけるものとする。
7.指定テロ犯罪被害者支援基金の運営
基金の運営については、内閣総理大臣の監督の下に、指定団体に委託することができる。
8.被害者補償
基金は、被害者に対して、十分な補償を行う。補償の金額は、加害者その他に対する損害賠償債権から労災補償その他被害者がテロ被害を原因としてすでに受領した金額を控除した額を下らない額とする。
国は、この補償を行った場合、被害者個人の有する損害賠償債権等を代位取得する。
9.この法律によるテロ犯罪事件の指定は、本法律施行前に発生した事件にも行うことができるものとする。
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