庶民の弁護士 伊東良徳のサイト

◆短くわかる民事裁判◆

電子判決書:新法適用事件

新法適用事件と旧法適用事件

 2026年5月21日の民事訴訟法改正の全面施行を受け、2026年5月21日以降に訴えが提起された事件(新法適用事件)では事件記録が電子化されるため、新法適用事件か旧法適用事件かによって、様々な点で扱いが変わります。用語(呼び方)や概念の違いで、実際の現象面ではほとんど変わらないということも多いのですが。
 ここでは、2026年5月21日以降に訴えが提起された事件(新法適用事件)の電子判決書について説明します。第1審の訴えの提起が2026年5月20日以前であれば、判決が2026年5月21日以降でも、さらには控訴や上告が2026年5月21日以降でもこちらの旧法適用事件の扱いになります。ですから、実は新法適用事件での電子判決書はまだあまり作成されておらず、私もまだ受け取ったことがありません。
 2026年5月20日以前に第1審の訴えが提起された事件(旧法適用事件)の判決書、判決正本等については「判決正本:旧法適用事件」を読んでください。

電子判決書(新法適用事件)

 2026年5月21日以降に第1審の訴えが提起された事件(新法適用事件)では、裁判所は電子ファイル(法律上の用語としては電磁的記録)化した判決書を作成し(民事訴訟法第252条)、その電子判決書に基づいて判決を言い渡した後その電子判決書を裁判所のシステム(当面 mints。裁判所は2027年度中に新たなシステム TreeeS に移行するとアナウンスしています)に記録します(民事訴訟法第253条第2項)。この電子判決書が、裁判官がWord等で作成したファイルを直接pdf化するのか、プリントアウトしてからpdf化するのかなどは、裁判所の解説も見当たらず、私はまだ電子判決書をもらったことがないのでわかりません。
 旧法適用事件で作成される紙の判決書には判決をした裁判官が署名押印することになっていますが、電子判決書には署名押印はされません。その代わりに、「判決をした裁判官は、電子判決書が当該裁判官の作成に係るものであることを示すとともに当該電子判決書の改変を防止するために必要な措置を講じなければならない。 」とされています(民事訴訟規則第155条第1項)。作成者の表示は、裁判官の氏名を電子判決書に記載するということですが、「当該電子判決書の改変を防止するために必要な措置」って何でしょうか。最高裁判所事務総局民事局監修の「条解民事訴訟規則(デジタル化関係等)」(司法協会、2025年)は、「当該電子判決書の内容が第三者によって改変することを防止するためのシステム上の措置を講じること」(同書435ページ)、「『改変を防止するために必要な措置』は、必要なシステム上の権限に基づいて行われることを想定しているものの、概念上、改変を防止するという目的のために講じられる措置を広く含み得るものであり、その具体的・技術的な手段を特に限定するものではない。」(同書16ページ)、「その表示の方法については、適宜、システムに記録された電子判決書が完成したものであることが分かる形での表示がされれば足り、形式的に『改変を防止するために必要な措置』を講じた旨の文言を表示させることまでは必要ないと考えられる。」(同書436ページ)としています。裁判所内部の操作で具体的にどうするかは公表しない、外部からアクセス(閲覧・ダウンロード)するファイルは何の変哲もないpdfファイルだということのようです。

原本と正本?

 旧法適用事件で作成される紙の判決書には、裁判官が署名押印し裁判所に保管される原本と、当事者に交付(送達)される裁判官が記名あるいは署名押印したもののコピーに書記官の認証文をつけた判決正本があり、両者が区別されていました。しかし電子判決書は、裁判官の署名押印はなく、裁判所のシステムに記録されているものだけで、システム送達を受ける当事者はそのシステム上の電子判決書のファイル自体を閲覧しダウンロードすることになります。その意味で、かつての原本と正本という区別・仕分けはないことになります。
 ただし、システム送達を受けない当事者に対しては、「電子判決書に記録されている事項を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容が当該電子判決書に記録されている事項と同一であることを証明したもの」を送達することとされています(民事訴訟法第255条第1項、第2条第1号:電子判決書に代わる電子調書の部分をカットして引用しています)。ここでいう「最高裁判所規則で定める方法は、同号の書面の内容が電子判決書又は電子判決書に代わる電子調書に記録されている事項と同一であることを証明する旨を記載し、裁判所書記官が記名押印する方法とする。」とされています(民事訴訟規則第159条第2項)。結局は、電子判決書の出力書面(プリントアウト)に書記官の認証文と記名押印をつけた、従来の判決正本と同じ形式のものが郵送で送達されることになります。民事訴訟法と民事訴訟規則の文言が回りくどく読みづらくなっただけで、受け取る側では従来と変わらないと言ってよさそうです。

登記用電子判決書

 新法適用事件でシステム送達される(裁判所のシステムからダウンロードする)電子判決書には、従来の紙の判決正本とは異なり、書記官の認証文(と記名押印)がありません。しかし、それでは登記申請ができないので、裁判所は、登記手続きを要する電子判決書(主文で登記手続きを命じる判決)については、オンライン登記申請を可能にするために書記官の認証文と電子署名を付した電子判決書を(当事者に送達する電子判決書とは別に)システムの「記録外領域」にアップロードする、それを用いて登記申請するようにとアナウンスしています(「民事訴訟フェーズ3に向けた準備の手引」R8.6.19版35ページ)

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。  

(2026.9.23作成)

**_**区切り線**_**

短くわかる民事裁判に戻る短くわかる民事裁判に戻る

トップページに戻るトップページへ  サイトマップサイトマップへ

民事裁判の話民事裁判の話へ   もばいるモバイル新館 民事裁判の話モバイル新館 民事裁判の話

私に相談・事件依頼をしたい方へ 私に相談・事件依頼をしたい方へ