◆短くわかる民事裁判◆
電子申立て(mints)と紙ベース申立ての違い
一般人は電子申立て(mints)も書面申立て(紙ベース)も可能です
2026年5月21日以降に民事裁判の訴えを提起する場合は、裁判所のシステム(当面 mints。裁判所は2027年度中に新たなシステム TreeeS に移行するとアナウンスしています)を利用した電子申立て(オンライン申立て)をすることができます(民事訴訟法第132条の10)。
弁護士は(簡易裁判所で代理ができる認定司法書士も)、2026年5月21日以降は、電子申立てが義務づけられ、それ以外の方法(従前と同じく紙の訴状等を提出する)による訴えの提起はできません(民事訴訟法第132条の11)。
しかし、一般人は、2026年5月21日以降も、電子申立てによることは義務付けられていませんので、電子申立てによらずに従前の方法(紙の訴状等の提出)により訴えを提起することができます。
つまり、本人訴訟の原告は、2026年5月21日以降に訴えを提起する場合、電子申立てをすることも、従前と同様に紙ベースで申し立てることもでき、それは自分で自由に選択できます。
電子申立て(mints)と紙ベース申立ての違い
電子申立てにはmintsのアカウント登録が必要
電子申立ては、裁判所のシステム(mints)にサインインして行いますので、事前にmintsのアカウントを取得することが必要です。
mintsのアカウント登録の説明と登録届出フォームはこちら(裁判所のサイト)
mintsのアカウント登録は、電子申立てだけでなく、裁判所からの書類の送達(電子判決書や電子和解調書等)や相手方提出の準備書面や書証等を電子ファイルで受けとったり、電子記録の閲覧(実際はダウンロード)をするためにも必要なので、電子申立てをしない場合でもしておいた方がいいと思いますが。
電子申立ての場合は押印不要です
紙ベースの訴状は、その提出により訴訟手続きを開始させるものなので記名押印が必要です(民事訴訟規則第2条第1項)が、電子申立ての場合は、mintsにサインインしていることで本人確認ができているものとして、押印は不要とされます(民事訴訟法第130条の10第4項、民事訴訟規則第52の11第1項前段)。
電子申立てでは添付書類を省略できたり画像ファイルで足りる(原本提出不要)ことがあります
訴え提起時に訴状に添付すべき書類(訴訟委任状、法定代理人の資格証明書:戸籍謄本等、法人について登記事項証明書:法人登記簿謄本、不動産関係訴訟で不動産登記簿謄本等)は、紙ベースの訴状の場合、原本を訴状とともに裁判所に提出します。
電子申立ての場合、不動産登記簿謄本については不動産番号と管轄登記所を記載すれば(写しも)提出不要とされています(民事訴訟規則第55条第5項。法人の登記事項説明書も今後省略可能となるというアナウンスはありますが現時点では実現していません)。ほかの添付書類も、原本は手元に残して、画像ファイルをアップロードすれば足ります。
電子申立ての場合、書証や証拠説明書は申立て時点では出す必要がありません(出せません)
紙ベースの申立ての場合、通常は、訴状で引用している書証や基本書証を、証拠説明書とともに訴状提出時に裁判所に提出します。
しかし、電子申立ての場合、mintsが裁判所による事件との関連付けの前には、書証が受け付けられない仕様のため、原告が書証を訴状とともに提出したい場合でも、申立て時には提出できません。提出は、裁判所から(mintsから)のメールが来た後で、mintsにサインインして行います。
その分、書証が十分準備できていなくても、まずは申立てができるというか、時間が稼げるとも言えます。
※裁判所は、TreeeSになると、訴状と同時に証拠説明書と書証が提出できるようになるとアナウンスしています。
訴状の副本は…
紙ベースの申立ての場合、被告に送達する訴状副本を、訴状(正本)とともに裁判所に提出します。
電子申立ての場合、そんなものは不要であるものと、ふつうの人は思うでしょう。しかし、多くの場合、申立てをした後で、裁判所から、原告が電子提出した訴状を裁判所がシステムにアップロードしたものを、原告がダウンロードしてプリントアウトした「出力書面」を裁判所に提出(持参または郵送)することを求められます(民事訴訟規則第58条)。
訴状送達前に被告からシステム送達を受ける旨の届け出があったときはそうならないということですが、そういうことが一体どれくらいあるでしょうか。電子申立ての際の参考事項として被告代理人(となるであろう者)についての情報を届け出るべきとされていて(民事訴訟規則第55条の2)それに基づいて裁判所がその弁護士に確認し、訴訟委任状が出れば出力書面ではなく電子ファイルをシステム送達することが想定されていますが、訴状を見る前に当事者が委任するか、弁護士が受任するか、私には疑問に思えます。
電子申立てをするとシステム送達を受けることが義務付けられます
民事訴訟規則第52条の9第4項は、電子申立てをしようとする者は、電子申立ての際に、システム送達を受ける旨の届け出をしなければならないと定めています。システム送達を受ける旨の届け出をすると、裁判所が送達すべき電子判決書や和解調書等や相手方が直送すべき準備書面等はすべてmintsにアップロードされるのみで郵送やファクシミリでは送られないことになります。
mintsの新規申立てフォーム上は、システム送達を受けるというトグルがあって、それをオフにしても申立て書提出ボタンは押せるようになっているはずですが…(試したことはないですが)
規則上はこのようになっていますので、システム送達は受けたくない(判決等は郵送してほしい、相手方からの準備書面等は郵送かファクシミリ送信してほしい)という場合は、電子申立てを回避すべきこととなりそうです。
訴え提起手数料は1100円だけ安くなります
民事訴訟費用法の改正により、2026年5月21日以降に提起された訴え(民事訴訟法の新法適用事件)については、従来の予納郵券部分が訴え提起手数料(従来の貼用印紙)と一本化され、現金(ペイジー)払いとなりましたが、その金額は、電子申立ての場合、紙ベースの申立てよりも1100円だけ安く設定されています(民事訴訟費用法別表第二の1項ロ)。
どちらの場合も記録は電子化されます
なお、紙ベースで申立てをした場合でも、事件記録は電子化され、裁判所書記官が提出された訴状等の書面を電子化(スキャナーで読み取りpdfファイル化する)して記録します(訴状等につき民事訴訟法第132条の12第1項、その後の提出書面につき民事訴訟法第132条の13)。そして、電子化して記録されたファイルが正式の事件記録となります。
本人訴訟の原告が紙ベースの申立てをし、システム送達を受ける旨の届け出をしない場合(紙ベースの申立ての場合はシステム送達を受ける旨の届け出はしないのがふつうでしょうけど、紙ベースの申立てをしつつシステム送達を受ける旨の届け出をすることも可能です)、被告側は、弁護士がつけば当然に、本人訴訟でもmints利用で応訴すれば、答弁書やその後の準備書面、乙号証等は電子ファイルでmintsにアップロードしたうえでそのファイルのプリントアウト(出力書面)を原告に郵送かファクシミリで直送することになります。その後原告側の提出書面(準備書面、甲号証等)は、裁判所に正本を提出し(持参、郵送、ファクシミリ)、被告に副本を郵送するかファクシミリ送信して直送することになります。その場合も裁判所は原告提出の書類を電子化し、その電子化されたものが正式の事件記録となり、被告はそのファイルをmintsからダウンロードすることができます。
要するに、原告が紙ベースでの申立てを選択しても、裁判所は当然に、被告も多くの場合はmintsを利用し、ただ原告はmintsを使わずに自分は紙ベースで提出し、裁判所や相手方から紙ベースのもので受け取ることができるというだけです。そして、事件記録は電子化されたものが正式のものですから、もし紙ベースの書面と電子ファイルに食い違いがあったとき(現実に考えられるのは、スキャンするときやプリントアウト・送信するときに1枚飛ばしたとかくらいでしょうから、通常は、受け取ったもののページ数を確認すれば大丈夫とは思いますが)は電子ファイルが優先されることになります。
まとめ
細かいことも含め、私が現在認識できている電子申立て(mints申立て)と紙ベースの申立ての違いは、以上のようなものです。
弁護士は、2026年5月21日以降の訴え提起では、(ごく一部の例外的な旧法適用事件を除き)電子申立てが義務付けられているので、mints一択ですが、本人訴訟の原告は、電子申立てと紙ベースの申立てを自由に選択できます。
本人訴訟の原告の方は、上に書いたようなことを考慮して、選択をすればいいと思います。
※なお、現時点で電子申立てができない事件については、「これから訴え提起するときの電子申立て(mints)と紙ベース申立ての仕分け」のページで説明しています。
訴えの提起については「民事裁判の始まり」でも説明しています。
モバイル新館の「訴えの提起(民事裁判の始まり)」でも説明しています。
(2026.8.9作成、最終更新2026.9.3)
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