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◆短くわかる民事裁判◆

電子和解調書:新法適用事件

新法適用事件と旧法適用事件

 2026年5月21日の民事訴訟法改正の全面施行を受け、2026年5月21日以降に訴えが提起された事件(新法適用事件)では事件記録が電子化されるため、新法適用事件か旧法適用事件かによって、様々な点で扱いが変わります。用語(呼び方)や概念の違いで、実際の現象面ではほとんど変わらないということも多いのですが。
 ここでは、2026年5月21日以降に訴えが提起された事件(新法適用事件)で和解が成立したときに作成される電子和解調書について説明します。第1審の訴えの提起が2026年5月20日以前であれば、判決が2026年5月21日以降でも、さらには控訴や上告が2026年5月21日以降でもこちらの旧法適用事件の扱いになります。ですから、実は新法適用事件での電子和解調書はまだあまり作成されておらず、私もまだ受け取ったことがありません。
 2026年5月20日以前に第1審の訴えが提起された事件(旧法適用事件)の和解調書等については「和解調書:旧法適用事件」を読んでください。

電子和解調書(新法適用事件)

 裁判所書記官が和解について、「電子調書を作成し、これをファイルに記録したときは、その記録は、確定判決と同一の効力を有する。」と定められています(民事訴訟法第267条)。
 電子和解調書は(和解以外の電子調書も同じですが)、裁判長が内容を確認したうえで、「これを確認したことを当該電子調書上明らかにする措置を講じなければならない。 」とされています(民事訴訟規則第66条第2項)(民事訴訟法上の「裁判長」と「裁判所」の区別等が気になる方は「裁判長と裁判所」を見てください)。
※改正前の条項と改正後の条項は、調書か電子調書か、押印か確認したことを当該電子調書上明らかにする措置かの違いだけで、実質的な違いはありません。
 民事訴訟規則の「確認したことを当該電子調書上明らかにする措置」というのはどんな措置でしょうか。最高裁事務総局民事局監修の「条解民事訴訟規則(デジタル化関係等)」(司法協会、2025年)には、「裁判長等が電子調書について本条の措置を講じた場合には、電子調書上、この措置が講じられた旨が明らかになるとともに、電子調書の内容を確認した裁判長等の氏名が表示されることになるが、その表示の方法については、適宜、ファイルに記録された電子調書が完成したものであることが分かる形で表示されれば足り、形式的に本項の『明らかにする措置』を講じた旨の文言を表示することまでは必要ないと考えられる。」としています(同書286ページ:明らかな脱字を補って引用)。

 電子和解調書は、まだ私は受け取っていないのですが、法令上の記載事項に実質的な変更はありませんので、以下のような体裁のものになると考えられます。
 「電子和解調書」とか「弁論準備手続電子調書(和解)」等の表題で、1ページ目に、「事件の表示」(事件番号で特定)、「期日」(当該和解期日や弁論準備手続期日の年月日、開始時刻)、「場所等」(裁判所の「準備手続き室」とか「和解室」等:Web会議の場合、「(ウェブ会議の方法による)」と記載されます)、「裁判官」(当該期日に出席した裁判官名)、「裁判所書記官」(担当書記官名)、「出頭した当事者等」(出席した当事者及び代理人の肩書きと氏名:Web会議による参加者には「(同代理人事務所)(通話者の所在する場所の状況が手続を実施するために適切なものであることを確認した。)」という記載が付記されます)が記載され、電子和解調書では「手続の要領等」、弁論準備手続電子調書では「当事者の陳述等」という記載の下に「当事者間に次のとおり和解成立」と記載されます。
 その「次のとおり」部分は、「第1 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり」、「第2 請求の表示 請求の趣旨及び原因は訴状記載のとおり」(ただし、訴状の一部訂正申立書や訴えの変更申立書が出された場合は、それも引用:例えば「請求の趣旨及び原因は訴状及び訴状一部訂正申立書(令和○年○月○日付)のとおり」など)、「第3 和解条項 別紙和解条項記載のとおり」として、別紙当事者目録、別紙和解条項が綴られると思われます。
 電子調書には、押印がなされないため、書記官の認証文等は付けられないと思います。裁判長が内容を確認したことを明らかにする措置がどのような記載になるかは、実際に作成されたものを受け取ってみないとわかりません。

新法適用事件での電子和解調書の送達

 電子和解調書は、「当事者に送達しなければならない。」と定められています(民事訴訟法第267条第2項)。
※「和解調書:旧法適用事件」で説明しているとおり、従前は和解調書については送達するという規定がなく、裁判所が原告側に口頭で送達申請をさせて双方に送達していましたが、法改正で裁判所が職権で当然に送達することになりました。かつては送達のための郵券は原告が予納したものを用いるため、被告への送達に原告が予納した郵券を使用することはけしからんなどという原告が稀にいて裁判所が困っていたようですが、新法適用事件(2026年5月21日以降に提訴した事件では、予納郵券が訴え提起手数料に吸収されてなくなり、郵送料を使っても使わなくても原告に戻ってくることもなくなって、費用面での問題も解消しました。

 電子和解調書は、裁判所のシステム送達を受ける旨の届け出をしている当事者(及び代理人)には、裁判所書記官が裁判所のシステム(当面 mints。裁判所は2027年度中に新たなシステム TreeeS に移行するとアナウンスしています)にアップロードすると、その旨の連絡が届出アドレスに電子メール等で連絡され、自分で裁判所のシステムにサインインして閲覧・ダウンロード等をすることで送達されます。アップロードの連絡の電子メールが発信されても1週間放置した場合は、その時点(発信から1週間経過時点)で送達されたものと扱われます(民事訴訟法第109条の3第1項第3号)。

 システム送達を受ける旨の届け出をしていない当事者に対しては、「電子調書に記録されている事項を記載した書面であって裁判所書記官が最高裁判所規則で定める方法により当該書面の内容が当該電子調書に記録されている事項と同一であることを証明したもの」(民事訴訟法第267条第2項、第255条第2項第1号:電子判決書関係の部分を省略して引用しています)を送達することになります。
 この場合、要するに電子和解調書の出力書面(プリントアウト)に書記官の認証文と記名押印がつけられたもの、したがって旧法適用事件での和解調書正本とほぼ同じものが郵便(特別送達)で送られることになります。


 和解については「和解」でも説明しています。
 モバイル新館のもばいる 「和解」でも説明しています。
 

(2026.9.27作成)

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