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短くわかる民事裁判◆
附帯抗告
 裁判所の決定・命令に対して抗告の申立てがあった場合、その相手方は、自らの抗告期間が経過した後であっても、附帯抗告をすることができます(民事訴訟法第331条、第293条、民事訴訟規則第205条、第178条)。即時抗告に限らず、他の抗告、通常抗告や再抗告、許可抗告、特別抗告も同様と考えられます。
 附帯抗告は、抗告申立てと同じ方式で行い、口頭弁論が開かれる場合は(抗告審の審理でそのようなことはほとんどありませんが)弁論終結まで、書面審理の場合は抗告裁判所の決定が告知されるまで、申立て可能と考えられます(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版300〜301ページ)。
 附帯抗告は、基本的には附帯控訴と同じ性質のものですので、「附帯控訴」のページを見てください。
 
 抗告審の審理の範囲が当事者の不服の限度に限られる事件(通常の民事裁判はそれに当たります。控訴審について民事訴訟法第296条、上告審は第313条でそれを準用、再審は第348条第1項、抗告はそれぞれ第331条、第349条第2項でそれらの規定を準用)では、申立人は申立ての拡張、相手方は附帯抗告で審理の範囲を自分に有利に変更(拡張)することができるという点に附帯抗告の意味があります。抗告審の審理の範囲が当事者の不服の限度に限定されない事件(処分権主義の適用がない事件:家事事件、非訟事件などがそれに当たります)では、相手方に附帯抗告を認める意味がない(附帯抗告をしなくても相手方に有利に変更できる)ので、附帯抗告は認められていません(家事事件手続法第93条第3項は、即時抗告に民事訴訟法の控訴の規定を準用するに当たって附帯控訴についての第293条、審理を当事者の不服の限度に限定する第296条第1項を除外しています。非訟事件手続法第73条第2項も同じです)。

 抗告に関する実務書にはこのような説明が行われるのが一般的です(1999年度書記官実務研究報告書「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」2019年補訂版300ページ、「抗告・異議申立ての実務:2021年、新日本法規」20ページ:執筆者は最高裁調査官)が、「抗告・異議申立ての実務」26ページには「相手方は附帯抗告が可能であるが、実務ではほとんど見られない。」とも記載されています(執筆者は横浜地裁判事)。

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