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短くわかる民事裁判◆
判決主文:地位確認等請求認容(解雇事件)
 労働者が解雇を争って提訴する地位確認等請求を全部認容する主文は、通常、
1.原告が、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2.被告は、原告に対し、令和○年○月○日限り○○円及び令和○年○月から本判決確定の日まで、毎月○日限り、月額○円並びにこれらに対する各支払期日の翌日から各支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
3.訴訟費用は被告の負担とする。
4.この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。
となります。

 労働契約上の権利を有する地位というのは、主としてというか実質的には賃金請求権があるということです。この判決が確定すると、確定後も毎月賃金が発生することになります。使用者が労働者の就労を拒否した場合、賃金は毎月発生し、労働者は使用者に賃金支払を請求できます(払わないときは、労働基準監督署に賃金不払いを申告して使用者を指導してもらう、未払賃金請求の訴訟等を行う:ごく簡単に勝訴できる、などの途があります)。他方、使用者が労働者に就労を求めているのに労働者が拒否する場合は、欠勤を続ける場合と同様ですから、何か就労を拒否することを正当化する特別な事情がない限りは、賃金が発生しませんし、それが続けば新たな解雇理由になります(その解雇は争っても勝ち目がありません)。
 判決確定までに発生した未払賃金(バックペイ)については、通常の金銭債権として強制執行できます。
 未払賃金の遅延損害金については、2020年3月31日までに発生したものについては使用者が会社(商人)であれば年6%、2020年4月1日以降に発生するものについては年3%です。未払賃金については、判決言渡後に発生するものについても(判決確定までに発生するものについては)支払を命じることになりますので、今の民法では法定利率を3年ごとに見直すことになっているため場合によると判決確定までに法定利率が変わる可能性があるということになります。それを考慮して、判決の書き方としては未払賃金(バックペイ)に対する遅延損害金を「各支払日の翌日時点における法定利率の割合による金員」とすることもあります(その方が法的には正確です。現時点で2026年4月1日まで判決が確定しないことを考える必要性があるのかという問題ですが)。
 地位確認については、仮執行宣言(かりしっこうせんげん)はつきませんが、未払賃金(バックペイ)については、仮執行宣言が付くのがふつうです。大手の会社なら、仮執行されないように、直ちに控訴するとともに執行停止決定を取るのがふつうです。執行停止決定があると、当然、仮執行はできません。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。
  

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