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短くわかる民事裁判◆
判決の確定(例外):多数当事者
 裁判の当事者が多数のとき、上訴の有無によって裁判はどのようになり、またいつ確定するでしょうか。
※当事者が複数の裁判を裁判業界では「訴えの主観的併合(うったえのしゅかんてきへいごう)」と呼んでいます。原告が複数の種類の請求をすることは「訴えの客観的併合(うったえのきゃっかんてきへいごう)」と呼んでいます。ざっくり、人が違うものを「主観的」、それとは別類型のものを対照的に「客観的」といって区別してるんですね。

 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一(ごういつ)にのみ確定すべき場合(裁判業界では、このような訴訟を「必要的共同訴訟(ひつようてききょうどうそしょう)」と呼んでいます)、共同訴訟人のうち1人が上訴すれば全員について上訴があったことになり、全員について判決全部が確定しないことになります。
 この場合は、全員の控訴期間・上告期間が経過して初めて、判決が確定します。
 必要的共同訴訟の例としては、不動産等の共有の場合に、共有権の確認を求める訴えや共有者から第三者に対する(共有名義での)所有権移転登記請求、共有者から隣地所有者に対する境界(けいかい)確定訴訟、同様の考え方から相続人が複数の場合の特定の財産が遺産に属することの確認請求や他の相続人に対する相続人の地位の不存在確認請求などがあります。

 そうでない通常の多数原告、多数被告の訴訟は、例えば1人の借主から多数の貸金業者に対する過払い金請求のような「同種の原因」に基づく共同訴訟(民事訴訟法第38条後段)のような共同訴訟人間の関係が希薄な場合はもちろんのこと、借主と連帯保証人や共同不法行為の場合のような共同訴訟人の訴訟結果が自分の債務・責任と強い関連を持つときでも、1人の上訴は他の者には影響せず、上訴しなかった当事者については各別に確定します。
 したがって、共同訴訟人のうち上訴しなかった者、あるいはされなかった者と相手方の間では、その当事者の上訴期間の遅い方の経過で判決が確定します。
 共同訴訟人のうち上訴した者、あるいは上訴された者と相手方の間では上訴審が係属しますが、上訴審で原判決が変更されても、上訴せず確定した当事者には影響しません。そこで矛盾が生じると、えてしてトラブルになるのですが。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。

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