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短くわかる民事裁判◆
判決主文:仮執行宣言
 民事訴訟法第259条第1項は「財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。」と定めています。
 そして、「仮執行の宣言は、判決の主文に掲げなければならない。」と定められています(民事訴訟法第259条第4項前段)。

 実務上は、原告は、裁判所が通常仮執行宣言を認めない請求以外については、訴状の請求の趣旨で仮執行宣言を求め、裁判所はその申立てにより、必要な場合、金銭支払を命じる部分については多くの場合に、担保を立てさせることなく仮執行宣言をつけるという運用がなされています。

 財産権上の請求でないもの、例えば離婚請求については、仮執行宣言をつけることができず、離婚請求とともに審理判決された財産分与等の財産権上の請求についても、財産分与請求権は離婚判決確定によって生じると解されているので仮執行宣言はつけられません。
 解雇事件での地位確認請求(労働者としての権利を有する地位の確認)については、財産権上の請求であるとされてはいますが、実務上、仮執行宣言はつけられません。近時の裁判所の傾向では地位保全の仮処分として保全の申立をしても保全の必要性がないとして認めてくれませんので、少なくとも仮執行の必要性は認めないということでしょうか。
 登記請求については、裁判所は仮執行宣言はつけることができないと解しています(最高裁1966年6月2日第一小法廷判決は、移転登記請求に仮執行宣言をつけた判決による登記は違法であるが、その判決が確定することによってその違法は治癒されるとしています)。

 訴訟費用の負担についての判決にも仮執行宣言をつけることができると解されていますが、通常はつけられません。
 建物明渡請求や建物収去土地明渡請求についても仮執行宣言をつけることはできるとされています。仮執行が重大な結果を招くことから微妙な事案では仮執行宣言はつけないことが多いですが、裁判官の考えにより、つけられることがあります。

 裁判所は、仮執行宣言をつける場合、申立てによりまたは職権で担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができます(民事訴訟法第259条第3項)。これを裁判業界では「仮執行免脱宣言(かりしっこうめんだつせんげん)」と呼んでいます。
 仮執行免脱宣言も、仮執行宣言と同様、判決の主文でする必要があります(民事訴訟法第259条第4項後段)。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。
  

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