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短くわかる民事裁判◆
イレギュラーな仮執行宣言
 仮執行宣言は、裁判所が必要があると認めるときになされ(第1審の場合:民事訴訟法第259条第1項)、金銭請求については原則として仮執行宣言をするべき控訴審判決の場合でも不必要と認める場合はしなくてもよく(民事訴訟法第310号)、担保を立てさせるかどうかも裁判所の裁量に任されていて(第1審につき民事訴訟法第259条第1項、控訴審につき民事訴訟法第310条)、裁判所の裁量が幅広く認められています。

 航空自衛隊新田原飛行場周辺住民が騒音被害による損害の賠償を請求した国家賠償請求訴訟の控訴審で、福岡高裁宮崎支部2024年8月2日判決は、金銭請求について申立てがあるときは不必要と認める場合を除き担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない(民事訴訟法第310条)控訴審の判決で、仮執行宣言の執行開始時期を判決書が国に送達されてから14日後とする仮執行宣言と、国が求めた仮執行免脱宣言を行うというイレギュラーな判決を行っています。
 その仮執行に関する主文は「この判決は、第3項(1)から(4)に限り、一審被告(附帯控訴人)に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。」というものです。

 仮執行免脱宣言により、国は担保を提供することで仮執行を免れることができますが、その担保を積むのが遅れた場合に、早期に判決書の送達を受けた住民の一部が仮執行に着手する余地があるので、国が万が一にも仮執行を受けないようにと仮執行に着手できる時期を遅らせたもので、当事者が国であることに忖度したイレギュラーな裁判といえるでしょう。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。
  

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