◆短くわかる民事裁判◆
判決書の構成
民事訴訟法では、判決書には、@主文、A事実、B理由、C口頭弁論終結の日、D当事者及び法定代理人、E裁判所を記載しなければならないと定められています(民事訴訟法第253条第1項)。
近年は、実際の判決書では、主文、請求、事案の概要、前提事実及び争いのない事実、争点、争点についての当事者の主張、当裁判所の判断というような構成が多くなっています。
主文は、判決の結論で、この部分について相手方(通常は被告)に対してその実行を求め、相手方が任意に実行しないときは、強制執行をすることができます。法的な意味では、この主文が一番大事なものということができます。
請求は、原告が求めていたもの(請求の趣旨:せいきゅうのしゅし)を確認的に記載しているものです。
事案の概要は、どのような事件で原告が何を求めていたかの要約です。
前提事実及び争いのない事実は、裁判所が結論を導く前提となる事実のうち、当事者(原告と被告)が争わない事実と、客観的な手堅い証拠で認定できる(ほぼ間違いないという心証の)事実を書き出したものです。
争点は、裁判所が結論を導くために判断する必要がある重要な事項で当事者間で争いがある論点を整理して列挙したものです。
争点についての当事者の主張は、そのとおり、裁判所が整理して列挙した争点について、原告と被告がそれぞれ何を主張したかを整理して要約したものです。この部分は、裁判所がその主張する事実を認めたというものではありません。ときどき判決文のこの部分の記載を裁判所が認めたものと誤解して読んでいる人がいるので注意が必要です。
当裁判所の判断は、裁判所が結論を導くに当たって認定する必要がある事実についての認定と、その事実認定に基づいて、争点についての評価判断を示すものです。
判決書を読むに当たっては、「当裁判所の判断」に注目する必要があります。「当裁判所の判断」を検討することで、裁判所が当事者の請求について何を考慮しどのような理由で結論を出したかがわかります。実質的には、この部分が判決理由と言えます。勝訴した当事者にとっては、自分の主張がどの程度、またどのように認められたかの確認ができ、満足度が決まるところでもあります。そして、敗訴した当事者にとっては、この「当裁判所の判断」を検討することによって、自分の主張した事実、証拠書類や証言、法律構成のどこに弱点があったのかと、この判決の考え方が標準的なものか担当した裁判官の独特のものかを見極め、控訴した場合に逆転の可能性がどれくらいあるかを判断するということになります。
判決については、モバイル新館の 「弁論の終結と判決」でも説明しています。
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