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短くわかる民事裁判◆
判決の誤記と上訴
 最高裁は、「判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるとき」(民事訴訟法第257条第1項)の更正は、判決をした裁判所のみならず、上級審においてもできることを繰り返し判示しています(最高裁1957年7月2日第三小法廷判決最高裁1967年8月25日第二小法廷判決最高裁1972年6月2日第二小法廷判決等)。

 他方で、最高裁は、最高裁1953年12月24日第一小法廷判決で、「所論に指摘する原判決理由中に借家法『第2条ノ2』とあるは『第1条ノ2』の誤記であることは判文の全趣旨に徴し明らかである。そしてかかる誤記は更正決定を以て訂正すれば足り、原判決破棄の理由とならない。」として誤記の訂正は判決の更正によるべきであって原判決を破棄する理由とはならないとし、最高裁1955年9月29日第一小法廷判決で、「本件訴状には『昭和二十七年十一月前半の給料五千円の支払を求める』旨の記載があり、これを前提として訴訟手続が進められたことが認められる。それ故、原判決中給料につき『昭和二十六年』とあるのは『昭和二十七年』の誤記であることは記録上明白であつて、この点については、上告人は民訴一九四条により判決の更正決定の申立をすることができる。よつて原判決には所論の違法は認められない。」として、やはり誤記の訂正は判決の更正によるべきであり、原判決を破棄する理由にならないとし、最高裁1956年6月1日第二小法廷判決で、「所論家屋番号の誤記の如きは別に更正する方法があつて原判決の執行不能の問題を生ぜず、これを理由として追加判決は口頭弁論を経べきものとすることはできない。」として判決の更正で足りるし、裁判の脱漏(民事訴訟法第258条第1項)として追加判決をする場合であっても口頭弁論は不要であるとしています。
※判決引用の民事訴訟法第194条は現在の第257条に当たります。

 要するに、明らかな誤りがある判決について上訴された場合、上訴審が更正してもよいが、上訴審はそれを義務づけられるわけではなく(上訴理由になるわけではなく)、更正しなくてもよい(更正するかどうかは上訴審の自由)、上訴審が更正してくれなければ、判決の更正はいつでもできる(期限はない:民事訴訟法第257条第1項)のだから、判決裁判所に更正の申立てをすればいい、ということですね。

 判決については、モバイル新館のもばいる 「弁論の終結と判決」でも説明しています。 

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